8.9式典「平和への誓い」代表に宮田さん 82歳、世界各地で体験語る

宮田隆さん

 長崎市は31日、長崎原爆の日(8月9日)の平和祈念式典で「平和への誓い」を読み上げる代表者に雲仙市の被爆者、宮田隆さん(82)を選んだと発表した。宮田さんは「核兵器は悪魔の仕業。被爆者の代表として実相を語り、(核兵器廃絶を)世界に訴えるメッセージができれば」と決意を述べた。
 宮田さんは5歳の時、爆心地から2.4キロの長崎市立山町(当時)の自宅で被爆。爆風で部屋の中から玄関口まで吹き飛ばされた。その後、水を求める看護師が、全壊の自宅に倒れ込んできて絶命した光景を今も鮮烈に覚えているという。
 非政府組織(NGO)「ピースボート」の船に乗り、世界各地で被爆体験を証言。長崎型原子爆弾(ファットマン)の原寸大模型を使って学校での講話を重ねてきた。県内在住の被爆者らでつくる団体「ICANサポート・ナガサキ」を設立し、日本政府が核兵器禁止条約に参加するよう求める署名などにも取り組んだ。
 今年は県内外の11人(男性9人、女性2人)が代表者に応募。選定審査会(調漸会長ら5人)が同日、最終候補者7人のスピーチ映像などを見て検討し全会一致で決めた。宮田さんは公募が始まった2017年から毎年応募。「ロシアのウクライナ侵攻による戦況が自分の被爆体験と重なった」とし、核兵器のない世界の実現を訴えた。
 調会長は同日の会見で「ウクライナの危機に直面する世界の状況下で、被爆者の声を発信するにふさわしい」と選定理由を説明。会見後、宮田さんは報道各社の電話取材で、ロシアが核兵器使用をちらつかせて各国を威嚇している現状について「新型コロナ禍で命の大事さや国際協調が芽生えたと思ったが、『長崎を最後(の被爆地)に』という私たちの訴えが踏みにじられている」と憤り、「皆さんと一緒に日本人として何をすべきか考えていきたい」と語った。


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