40年以上収集、自宅に貝殻の“博物館”オープン 緒方権次郎さん(74)

40年以上かけて集めた貝殻のコレクションに囲まれ、笑顔を見せる緒方さん=貝の家

 長崎市脇岬町の緒方権次郎さん(74)はこれまで40年以上、世界各地の貝殻を集めてきた。千種類を超える貴重なコレクションを「見たい」という声に応えて、この春、自宅の倉庫を改装し“博物館”をオープンさせた。「同じ種類でも一つ一つ模様が違い、宝石みたい」。貝殻に寄せ続ける思いが冷めることはない。
 「のもざき 貝殻の小さな博物館『貝の家』」という看板をくぐり、部屋に入ると、いろんな形や柄の貝殻が所狭しと並んでいた。1個360万円で取引されたと言われる巻き貝「リュウグウオキナエビス」、かつて世界で二つしか存在を知られていなかった「オオサマダカラ」、地球上の巻き貝で最も大きい「アラフラオオニシ」-。指先に乗る数ミリのものから両手で抱える数十センチのものまで、とても数え切れないが、「4割は箱の中に眠っている」と緒方さんは笑う。
 生まれも育ちも同市野母崎。高校卒業後、父の米穀店を継いだ。25歳の時、姉に誘われ、貝の博物館と呼ばれた「野母崎マリンランド」でも働き出した。当時知っていた貝はアワビやサザエといった食用だけ。「その辺の石ころと一緒」と思っていたが、貝を多く扱う売店を任されると、商人かたぎに突き動かされた。「売るには勉強して説明できるようにならんば」

緒方さんが集めた貝殻。「同じ種類でも一つ一つ模様が違う」という=貝の家

 同館顧問だった専門家の小菅貞男博士に「本気で勉強したいなら教える」と言われ、27歳ごろから猛勉強。米穀店の仕事と夕食を済ませると同館に行き、貝を手に取りながら日付が変わるまで文献を読む日々。いつの間にか、その魅力にのめり込んでいった。和名がない貝が載った英語の図鑑を取り寄せ、分からないことは東京にいる小菅さんに電話やファクスで質問。一緒にヨーロッパ各地の博物館を回ったりもした。
 「少しでもマリンランドをよくしたい」。同館の給料をほとんど収集に費やし、自腹で新種を展示した。フィリピンや台湾で探したり、コレクターと交換したり。遠洋に出る漁師と仲良くなり、網に掛かったものも買い取った。
 2000年に閉館した後は、ずっと自宅で保管していた。だが「見せてほしい」というコレクターも少なくなく、家族にも背中を押され、貝の家を開いた。「世界の珍しい貝」「東シナ海の貝」「野母崎の貝」などコーナーを分け、自作のアクセサリーや小物の土産もある。
 「子どもたちに貝の世界に興味を持ってほしい」。楽しそうに語る緒方さんの笑顔は少年のようだった。事前予約や問い合わせは(電090.2517.2113)へ。


© 株式会社長崎新聞社