不安定な働き方に不安な妻、それでも戸建にこだわる夫。3500万のローンを組んだら?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、41歳、派遣社員の女性。夫は建設業で、夫婦ともに収入が不安定。夫は年金に未払いあり。相談者は常にお金に不安があると言いますが、夫は戸建の家を建てたがっています。想定価格は3,000〜3,500万円とのことですが、このままローンを組んだらどうなるでしょうか? FPの渡邊裕介氏がお答えします。


3年後住宅購入を希望していますが、その時夫婦は40代半ばで、そこからローンを組むのがとても不安です。

本当は今すぐにでも欲しいですが、2年前に夫のカードの未払いが発覚し、あと3年はローンが組めません。その間に、400万円を貯めて頭金にするのが目標ですが、夫は建設業(大工)で、私は派遣社員。どちらも休みがそのまま収入に直結し、月によって収入がマチマチで不安定なので、とても不安です。

月5万円を定期預金で貯めていますが、その他にも特別出費に備えて、現金で保有しており旅行や車検、自動車保険などはそちらから出せるようにコツコツ貯めています。今は15万ほどあります。

私達が住んでいる地域で新築戸建てとなると、土地と建物で3,000〜3,500万程度はかかるようですが、35年でローンを組んでしまうと、完済は夫の年齢が79歳となり、繰り上げ返済をどの程度頑張ればよいのか全く見当がつきません。

夫の以前の会社が厚生年金に加入しておらず、支払いを始めたのがここ5年程度で、年金はほとんど見込めません。そのため、第一生命で独自にやっている年金積み立てを夫婦合わせて毎月4万5,000円程積み立てています。また私が正社員だった頃の確定拠出年金で、今でも毎月5,000円掛けています。

夫婦のものと別で個人的に200万程度持っているので、いざという時にはそちらを夫婦のために使うつもりでいます。車も数年後には買い換えないといけないですし、とにかくお金の不安が常にあり、気持ちが落ち着きません。

夫は、「中古でもいいから」と、戸建てにこだわっており、いくらまでの金額なら無理なく返済ができるのか、そのボーダーラインが知りたいです。

【相談者プロフィール】

・女性、41歳、派遣社員 ・夫、40歳、主人は建設業(大工)

・住居の形態 賃貸(関東地方)

・毎月の世帯の手取り金額:37〜45万円程度(私12〜14万円、夫25〜30万円)

・ボーナスの有無:なし

・毎月の世帯の支出の目安:25万円程度

【毎月の支出の内訳】

・住居費:6万8,000円

・食費:4万円

・水道光熱費:2万円

・保険料:2万5,000円

・通信費:1万5,000円

・車両費:5,000円(ローン完済済みで基本はガソリン代のみ)

・お小遣い:夫4万円、妻1万円

・その他:夫の作業着、工具代でだいたい毎月1万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:5万円

・現在の貯蓄総額:200万円

・現在の投資総額:5万円

・現在の負債総額:なし

渡邊:こんにちは、ファイナンシャルプランナーの渡邊です。40代で無理なく返済できる住宅購入のご相談です。ご相談者は、ご夫婦ともに月々の収入が不安定で将来に対して不安を抱えています。その中で、戸建て購入にこだわるならば、安心して返済できる物件価格の範囲をしっかりと見極めるのは重要になってきます。

3500万円を25年で返済するプランだと月の負担額は?

お仕事をリタイアした後に年金生活になると、厚生年金期間も短いとのことですので、公的年金もあまり期待できず、住宅ローンの負担はより大きくなります。よって、住宅購入については、今後働くであろう期間で返済可能な範囲で検討するのが大前提となります。

ご相談者の夫は40歳とのことで、仮に65歳まで働くとすると25年あります。実際にローンを組む場合は35年よりも25年で返済が可能な金額で考えると安心です。

仮に物件価格が3,500万円、諸費用は手元資金から拠出すると想定すると、
◆借入金額3,500万円
◆借入期間25年
◆金利変動0.45%
◆月々返済12万3,374円
となります。

3500万円のローンは現実的?

現在の家賃と比べると、固定資産税などの負担増も含めると約2倍の住居関連費用となります。仮に住宅ローン以外の固定資産税など住宅関連費用を月2万円程度とすると、現在の家賃からは、月額約7万5,000円の負担増となります。

現在の、手取りに対して月々の生活費を差し引くと、月額12~20万円が余る計算となり、この中から個人年金4万5,000円を拠出しているので、余力としては7万5,000円~15万5,000円となります。

すなわち、3,500万円の住宅ローンを組むと、一番低い時の手取り月収の場合、貯蓄余力がなくなる計算となります。返済計画を立てる際には、最低限の月収の場合で考えるべきなので、少し現実的ではないと思われます。

適正価格を割り出すのに必要なこと

では、適正な金額はどのくらいなのでしょうか。それを考えるためには、今後どういった経済的目標があるのかをもう少し整理する必要があります。ご相談の中には、旅行や自動車の買い換えについての記載があります。それぞれ、どれくらいの費用が必要で住宅購入と合わせて考えた時に、優先順位はどれくらいなのでしょうか。

また、将来の収入について、これまでの年金加入歴から、65歳以降どれくらい公的年金が受け取れるかの試算なども必要となります。特に、収入についても曖昧な部分が多いご様子です。確かに、働き方によって収入の変化はあるかと思いますが、シミュレーションを作成するためには、不確定な中でもある想定のもと考えていく必要があります。恐らく、将来の収入やローンの支払いに不安を抱えることを考えると、最低限の場合を想定して検討されたほうがよいでしょう。

リタイア後に向けた準備で考えなければいけないこと

住宅購入にあたり、考えなければいけないポイントを整理します。

【リタイア後に向けた準備】
〇将来の公的年金受取額の試算
〇確定拠出年金及び個人年金の将来受取額の試算
〇老後必要な生活費

将来への不安というのは、リタイア後にしっかりと生活できるかどうかの不安が大きいと思います。そこを解消するためには、リタイアした後に入ってくる収入や現在準備している貯蓄額から、老後に必要な生活費を差し引いて、足りない部分を準備する必要があります。住宅ローンを支払った上で、この足りない額が準備できるのであれば、問題無いと言えるでしょう。

リタイアまでの生活で考えなければいけないこと

【リタイアまでの生活】
〇何歳までいくらの収入が想定されるか
〇経済的目標の優先順位

次に、老後に向けて必要な金額が試算できれば、今から何年間でいくら貯める必要があるのかが見えてきます。その貯蓄が実現可能かどうかについては、今後どれくらいの収入を得ることができるのか、住宅ローンの返済以外にも、車の買い換えや、旅行へ行くなどレジャー費用など、やりたいことや必要な支出がどれくらいあるのかを整理する必要があります。

また、経済的な目標に優先順位を付けることで、優先順位の高い目標を達成するために、優先順位の低い目標の金額を下げるなど、理想の生活の実現に向けて対策を考えることもできます。

数字を「見える化」し、住宅購入の理由の話し合いを

もちろん、将来に渡ってのことなので、不確定な要素はありますが、不安を取り除くためには「見える化」すると効果的です。

これらを考えることで、適正な住宅費用が見えてきます。もしシミュレーションする中で、将来への不安が払しょくできないようであれば、ムリに住宅購入するのはお勧めできません。なぜ住宅購入したいのか、なぜ戸建てにこだわっているのか、戸建てを購入してどのような生活を実現したいのかなどをご夫婦でも話し合って、安心できる購入計画をぜひ目指していただきたいと思います。

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