駅前で「強烈な存在感」 8000万円かけた岡本太郎作品が鹿沼にあった

日本を代表する芸術家、岡本太郎が制作した「夢の樹」

 1970年の大阪万博のモニュメント「太陽の塔」で知られる世界的芸術家、故岡本太郎(おかもとたろう)さんが72歳の時に制作した「夢の樹(き)」。83年の完成から約40年を経た今も栃木県鹿沼市の玄関口、東武新鹿沼駅の東口ロータリーで強烈な存在感を放っている。

 アルミニウム製で高さ4メートル、重さ1.5トン。躍動感あふれる形状は「宇宙に向かって樹が、人間が、そして生命力が開くこと」を意味している。

 鹿沼市民文化センター新設のシンボルとして、市が岡本さんと旧知の県職員を介して制作を依頼。岡本さんは取材で幾度も鹿沼を訪れて杉並木を撮影し、制作に励んだ。「これだけ手間をかけるのかと勉強になった。鹿沼の芸術文化を進化させなければという重圧も生まれた」。元市収入役の阿久津亘宏(あくつのぶひろ)さん(82)はそう振り返る。

 「私がモニュメントを作るのは、銭などを払わずに多くの人が自由に見られるからだ」「(設置場所が一地方の)鹿沼などという意識は関係ない」。当時の下野新聞には「芸術は大衆のもの」という岡本さんの強い思いがつづられている。

 像は岡本さんの生誕100周年を期に2012年、同センターから現在地へ移設され、市の発展を見守っている。

 【メモ】栃木県鹿沼市鳥居跡町1475(東武新鹿沼駅)。当時の資料によると、像の総制作費は8000万円。移設時には300万円をかけ修復された。

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