本当は教えたくない福岡物件「180万で買える迫力の城壁付き物件」

「空き家ポリスの本当は教えたくない福岡物件」。「住む予定もないのに、おもしろそうな物件を探して見に行く」ことを趣味とする空き家マニアが、福岡の空き家物件を紹介していきます。 第17回は、「180万で買える迫力の城壁付き物件」です。

※記事公開日時点での情報です

今回お縄になったのは、
格安物件の宝庫・大牟田市にある【180万円/4DK/土地423‪㎡】のこちら。

シンプルな切妻屋根がかわいくて、品の良さそうなこの家が180万だと!!!
ということに、まず驚いてしまうのだが、驚くべきはそこではない。

この家の本当のすごさは、石垣。
そう、石垣の「石の大きさ」が尋常ではないのだ。

大きさ的に1mはあると思うんだけど、こんなBIGサイズの石を買うだけでも相当な費用がかかるのに、その石をここまで運んで、組み上げる手間を入れると、それはもう、すごい金額になると思われる…。

無駄に迫力のある、こんな城壁クラスの石垣が手に入り、毎日自分の所有物として愛でられる幸せだけでも、180万円の価値がありそうだ。

でもどこか疑問が沸いてしまう。
豪邸でもなんでもない、こんな普通の家に、なぜ分不相応とも言える石垣が組まれているのか?

その謎を解く鍵は空にあった。

上空から見ると分かるように、この辺りはどうやら戦後に宅地化されたエリアで、上の画像のように元はひとつの敷地として使われていたようなのだ。

画面手前に大きなお屋敷があって、そこも同じように立派な石垣を築いてるので、おそらくこの屋敷の当主が一面に城壁を巡らしたのではなかろうか。

ここからは想像だけど、

①当主が隠居するに当たり、元は空き地だった裏手にちいさな隠居屋を作った

②隠居屋への出入口が必要なので、通路を作った

③その通路に沿うように豪勢な石垣を整備した

という寸法かもしれない。

そう考えると、ちいさな家におおきな石垣という、過剰装備の理由も納得できるのだ。

石垣のくだりが長くなってしまってるけど、もう一度、別角度から石垣を見てみよう。

無駄に立派な石垣を縫うようにアプローチが走ってるんだけど、S字カーブみたいに道がクネってるおかげで、家に着くまでのあいだで強制的にひと呼吸つくことになる。

アプローチをこういう作りにすることで、玄関に至るまでのちょっとした「余白の時間」が帰り道にうるおいを生むことになるし、家の前にシンボルツリーでも植えてやれば、なにやら物語が生まれそうな予感もしてくる。

いやいや、そんな深読みしすぎでしょ…と思うことなかれ。
その意図を感じる画像がこれだ。

ご覧のように敷地は袋小路になっているので、人が入ってくるのは必ず画面右奥(車が止めてある部分)から、となる。

であれば玄関は近い方が便利だし、敷地を広く使うのなら、普通は手前の黒矢印方向にスロープを作りたいところ。

それなのにあえて黄色方向に通路を設けたのは、やはり家に向かうアプローチをドラマチックに演出したかったからだろう。効率性や経済性を度外視したこの作りはもはや、粋(イキ)としか言いようがない。。。

玄関にもこだわりが見られる。
シンプルながら良い材料を使っているのが見て取れるけど、注目は色。

ご覧のように、ポストや雨樋など細かい部分もすべて渋い赤色で統一していて、さりげない美意識が感じられる点も良き。

家の中に入るまでに語ることが多すぎて文章量が増えてしまったけど、一応さらっと室内の紹介もしておこう。

▲プレーンなしつらえの玄関。作り付けらしい靴箱もセンス良し。

▲床の間の脇にある書院障子がイカしてます。

▲縁側が広いので、コーヒーテーブルでも置いて午後のひと時を楽しみたい。

▲プライバシーが確保しやすい間取り。南向きの縁側が気持ち良さそう。

ということで、城壁レベルの石垣が180万で所有できるバーゲンセールの戸建、いかがだったでしょうか。

この辺りは、幕末の剣豪「大石進」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E7%9F%B3%E7%A8%AE%E6%AC%A1)の生家や道場があった「大石神影流(おおいししんかげりゅう)」ゆかりの場所でもあります。

石垣好きのみならず、武術好き・幕末好きにもオススメですので、気になる方はこの機会にぜひどうぞ。

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福岡県大牟田市180万円/4DK/土地423‪㎡

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