<月曜放談>熊谷の神対応、東京五輪・パラ…大きなレガシーに 県スポーツ協会専務理事・久保正美氏寄稿

久保正美氏

 スポーツの国際大会は、多くの人に感動と興奮を、子供たちに夢と希望を与えてくれる。2019年のラグビーワールドカップ(RWC)と1年延期となった東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)は開催地埼玉県にどんなレガシーを残したのだろうか。

 アジアで初めての開催となったRWCは、国内12会場で開催され、埼玉・熊谷会場は大規模改修で国内有数の専用スタジアムに生まれ変わった県営熊谷ラグビー場で3試合が行われた。

 大会当日は、熊谷市内の小中学生約1万5千人がスタンドで応援してくれた。事前に対戦国の歴史や文化を学び、国歌を歌って応援するなど、子供たちにとって一生忘れられない貴重な経験となった。 また、ボランティアの皆さんの笑顔でのおもてなしやスムーズな観客輸送は「熊谷の神対応」「ワールドリーディング」と高く評価された。

 大会後は、いつでもラグビーと触れ合うことのできる複合施設「さくらオーバルフォート」がオープンし、リーグワン初代王者に輝いた「埼玉パナソニックワイルドナイツ」の本拠地として、埼玉県を中心に北関東全体をラグビー色に染めるような大きなレガシーとなった。

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で史上初の1年延期となった東京2020大会は、全ての準備が変更に次ぐ変更、最終的には無観客開催など本当に大変な大会だった。

 しかし、医療従事者をはじめ関係した皆さんのご理解とご尽力で各競技の試合においては、世界各国から参加したアスリートが熱い戦いを繰り広げ、見る人々に感動と興奮をもたらした。

 埼玉県ゆかりの選手は、125人が出場し、その内、延べ29人が金メダル8、銀メダル10、銅メダル11を獲得する過去最高の活躍であった。

 県内では、さいたまスーパーアリーナでバスケットボール、埼玉スタジアムでサッカー、霞ヶ関カンツリー倶楽部でゴルフ、陸上自衛隊朝霞訓練場で射撃が開催され、東京2020大会の会場として歴史の1ページに刻まれた。

 聖火リレーは一部公道走行が中止となったが、オリンピックが県内40市町で、パラリンピックは朝霞中央公園陸上競技場で行われ、県民の皆さんが大会を身近で感じることができたと思う。

 私は今大会、これまで以上にパラリンピック競技をテレビで観ることができた。自身の残された機能を最大限に発揮して、限界に挑戦するパラアスリートの姿に大きな感動を覚えるとともに、一つのスポーツとして純粋に楽しめると感じた。

 本県行政においても、今年度からパラスポーツを担当する部署が他のスポーツと同じスポーツ振興課に一元化された。大会を機に、障害をお持ちの方も含め老若男女の誰もが、自分らしくスポーツを楽しみ、潤いのある生活を送れるようになれば、これこそがスポーツによる共生社会の幕開け、大会のレガシーとなるのではないか。そんなことを期待している。

■久保正美 県スポーツ協会専務理事 日本薬科大学特任教授

 くぼ・まさみ 嵐山町在住、県立松山高―日体大卒。1979年県立浦和高校に保健体育科教諭として赴任、県高校体育連盟理事長、全国高校総体推進室長、県保健体育課長、坂戸西高校長、熊谷女子高校長、県スポーツ局長などを歴任。2008年の全国高校総体や19年のラグビーワールドカップ日本大会、21年の東京五輪・パラリンピックの本県開催を主導した。現在は、公益財団法人埼玉県スポーツ協会専務理事、日本薬科大学特任教授を務める。66歳。

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