民意の行方~県知事選回顧~ 現職盤石、新人出遅れ 上越でもトリプルスコア

 任期満了に伴う県知事選は5月29日に投開票が行われ、2期目の当選を目指す現職・花角英世氏(64)が新人・片桐奈保美氏(72)との一騎打ちを制した。得票数は花角氏70万3694票に対し、片桐氏20万3845票。トリプルスコア以上の圧勝劇だった。

 上越地域での得票数を見ると、3市合計は花角氏8万7150票に対し片桐氏2万4106票で、同様にトリプルスコア以上の票差。上越市では花角氏5万9030票に対し片桐氏1万7521票、糸魚川市では花角氏1万6703票に対し片桐氏4139票、妙高市では花角氏1万1417票に対し片桐氏2446票と、花角氏が3市で大勝した。

「圧勝」呼び込む 花角氏

 花角氏は2月16日に再選出馬を表明。人口減少問題を本県の最重要課題と捉え、知事就任当初から掲げる「住んでよし、訪れてよしの新潟県」の実現に向けた各種政策公約を示し、支持を固めた。

 自民、公明両党に国民民主党、労働組合組織の連合新潟の支援を受ける分厚い布陣の下、4年前の前回選挙同様に「県民党」で選挙戦を展開。上越地域では地元選出の与党系議員らと各地を回り、街頭演説や屋内での個人演説会を通じて票の積み上げに努めた。上越地域3市の各市長も応援に駆け付けた。

 「ただ当選するだけではいけない」「圧勝しましょう」。選挙期間中、花角陣営にはそうしたげきが飛び交った。迎えた投開票日、午後8時ごろに早々と「当選確実」の報が入り、支持者らは歓喜に沸いた。

 吉報を受けあいさつした自民党新潟6区支部長・県連会長の高鳥修一衆院議員は「まだ票は確定していないが多分、圧勝でしょう」と切り出し、「この4年間の花角県政が順当に評価されたことの表れ。県政の課題は決して原発ワン・イシューでなく、さまざまあり、それに対応できるのは花角さんだと、県民が冷静に判断した結果だと思う」と手放しで喜んだ。

個人演説会を終え、大勢の支持者に見送られながら会場を後にする花角氏(5月25日夕、新井ふれあい会館)

訴え浸透できず 片桐氏

 片桐氏が出馬を表明したのは3月17日。野党第1党の立憲民主党が独自候補擁立を断念するなど、野党側が候補者選びに難航する中で、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原発攻撃に危機感を抱き出馬を決断。自身が長年にわたり〝脱原発〟運動に携わってきたこともあり、東京電力柏崎刈羽原発の「再稼働反対」を強調した。

 選挙戦では「原発なくして病院残す」をモットーに掲げた。花角県政における原発再稼働問題への姿勢、県立病院の在り方に不満を持つ有権者らへ訴求を図る一方、女性経営者としての経験や手腕もアピール。独自の経済政策などを打ち出した。

 社民、共産両党、同氏を支持する野党系の国会議員らと共に支持拡大に奔走したが、出遅れが響いた。上越地域では屋内での個人演説会は行わず、市民団体「市民連合・上越」の協力を得て上越市内の市街地などで街頭演説に注力。道行く有権者に浸透を図ったが、先行する花角氏を追い上げられなかった。

 平成28年の県知事選を野党共闘で制した米山隆一衆院議員は投開票日の夜、敗戦の報を受け「早い段階で候補を立てられなかった。より早く、候補を選べる体制を、野党は築くべきだった」と唇をかんだ。

街頭演説に集まった支持者らに駆け寄る片桐氏(5月26日午前、直江津ショッピングセンターエルマール前)

与野党決戦へ 試金石の参院選

 今回の県知事選では、目前の参院選を見据えた動きが目立った。

 立憲民主党現職で4選を目指す森裕子氏(66)は片桐陣営に、自民党新人の小林一大氏(48)は花角陣営に姿を見せた。2日の立候補予定者説明会には3陣営が出席し、選挙戦が確実な情勢。森、小林両氏を軸とした激戦が予想される。

 社民党県連代表の小山芳元県議は「(森氏は)知名度もあり、県知事選の影響はさほどないと思う。双方の陣営の運動量にかかってくるのでは」、自民党新潟6区幹事長の楡井辰雄県議は「(県知事選の結果は)多少は追い風になるかと思うが、あまり期待せず地道に街宣し、(小林氏の)政策能力、実行力を分かってもらえれば」としている。

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