性暴力訴訟 長崎市が控訴断念 田上市長「原告に心より謝罪したい」

性暴力訴訟の主な経過

 2007年、女性記者が当時の長崎市原爆被爆対策部長(故人)から取材中に性暴力を受けたとして市に賠償を命じた長崎地裁判決について、田上富久市長は7日、記者会見を開き、「主張を尽くした上での判決。真摯(しんし)に受け止める」として控訴を断念すると明らかにした。「被害者である原告に心より謝罪したい」と述べた。市の敗訴が確定する。
 控訴しない理由について田上市長は会見で「市として反省の上、必要な見直しをし、原告にも未来のために歩みを進めてもらうべきと考えた」と説明。原告本人に直接会って謝罪したいとの意向を示した。
 市の責任者として自らの給与を一定期間減額する考えも表明。「多くの人に迷惑や心配をかけ、申し訳ありませんでした」と頭を下げた。損害賠償金と遅延損害金計約3400万円や訴訟費用を合わせた関連議案を、開会中の定例市議会に追加提出する方針。

会見で控訴断念を表明する田上市長=長崎市興善町、市消防局

 5月30日の地裁判決は、部長が振るった性暴力は職務関連性があり、市は二次被害を防ぐ注意義務に違反したと認定。市長は「プライバシー保護や個人的見解の拡散防止など、事案発生時に対応する仕組みをさらに充実させる」として、二次被害防止策の充実・強化を図る考えを示した。
 一方、市が訴訟で「女性にも過失はあった」と主張し、市民の間に批判の声があることについて、市長は「論点を明確にするためだった」と弁明。「真摯に訴訟に臨む中で必要だったと理解を求めたい」と述べるにとどめた。
 市の控訴断念を受け、原告もオンラインで会見。「英断をうれしく受け止め歓迎する。暴力を許さず、女性の人権をしっかり重視し、『平和都市長崎』に真にふさわしい姿となることを望みます」と語った。
 判決によると、女性は07年7月、平和祈念式典に関する取材のため部長に面会。性暴力を受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症した。部長は同年秋、市の内部調査で事情を聴かれた後に自殺。別の市幹部は虚偽の情報を周囲に話し、週刊誌の取材に応じるなどした。


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