不評のお代は?

 なじみの店でなじみの商品の値段が10%上がったら、どうしますか? こう聞かれたら何とお答えだろう。いくつか選択肢がある。(1)その店で同じ量を買う(2)その店で買う量を減らす(3)その店で買うのをやめる▲東大の教授が4月、このアンケートをすると「その店で同じ量を買う」人が半数を超えたらしい。昨年は「他の店で買う」のが過半数だった▲これを受けた発言だったという。日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁が6日の講演で「家計の値上げ許容度が高まっている」と述べた。分かりづらいが、今の相次ぐ値上げを皆が受け入れている、と言いたかったらしい▲アンケートの「なじみの商品」が小麦粉を使った商品であれ、食用油であれ、どの店も同じように値上げしたら、いつもの店で買うのが普通だろう。仕方ないな、と心でため息をつきながら▲それを国民が「許容」している、と言えば「ため息が聞こえないのか」と難じられてもやむを得ない。物価が上がり続け、やがて賃金も上がるように-と景気の好循環を願っての発言だとしても、国民が置かれた現実を脇に置いては伝わるはずもない▲きのうは「適切な言い方ではなかった」と弁明に追われた。不用意な発言でわざわざ不評を買った総裁だが、物価高の折、不評の“お代”は思いのほか高くついたに違いない。(徹)


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