がん、遺伝性疾患の治療に期待…日華化学が次世代の医薬「核酸医薬」原料の大量生産技術を確立 研究用に世界初販売

日華化学

 日華化学(本社福井県福井市、江守康昌社長)は、次世代の医薬として期待される核酸医薬の原料「アミノ酸由来の人工核酸モノマー」の大量生産技術を確立した。同モノマーの活用により、従来より薬効が現れやすく副反応も少ない核酸医薬の開発が期待され、これまで治療できなかったがんや遺伝性疾患に対する革新的医薬として発展する可能性がある。同社は6日、核酸医薬の試験研究用に世界で初めて販売を開始した。

 アミノ酸由来の人工核酸モノマー(iL―aTNAシリーズ、SNAシリーズ)は、名古屋大学大学院工学研究科の浅沼浩之教授らの研究チームが開発した核酸の最小単位の分子。疾病の原因となる変異した遺伝子に直接働きかける核酸医薬の原料となる。

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 天然核酸由来の核酸医薬は、体内の酵素で分解されやすく薬が効きにくい傾向があった。一方で、化学的に変化させた従来の人工核酸由来の核酸医薬は副作用を起こしやすいという課題を抱えていた。

 今回のアミノ酸由来の核酸モノマーは従来品と異なった構造を持ち、酵素が働きにくいのが特徴。そのため、これを原料にした核酸医薬は体内で分解されずに薬効が発現しやすく、毒性も低いという、安定性と安全性を両立した結果が動物実験で確認された。

 今後、さらに試験などで大量の同モノマーが必要となることから、日華化学が合成方法を見直し、界面活性剤の製造などで培ってきた技術を活用して合成効率を飛躍的に高めた生産プロセスを確立した。これにより、高品質なモノマーを安価に販売することが可能となった。

 同社は「まずは、共同研究を行っている大学や研究機関向けに販売、提供を行うことで、新たな核酸医薬の研究開発に貢献していきたい」としている。

【核酸医薬】従来の医薬は疾患の原因となる変異遺伝子が作りだすタンパク質を標的にして作用していたが、核酸医薬は原因遺伝子に直接作用する。これまで治療できなかったがんや代謝性疾患、神経・筋疾患、遺伝性疾患の治療が期待される。国産の核酸医薬としては、全身の筋肉が徐々に衰える難病、筋ジストロフィーの治療薬が承認、発売されている。

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