FXの利益が吹き飛ぶ「ショック相場」を回避する方法、意識すべき相場の転換点とは

FX取引の典型的な失敗例として、コツコツと積み上げてきた利益が、ある日突然ドカンと消失してしまうケース「コツコツドカン!」(第7回参照)があります。これに陥らないためには、自分が取引している相場の「上がっている理由」「下がるリスク」など、ある程度は理解することが大切です。

今回は、どうしたら「ドカン!」を回避できるか、深掘りしていきたいと思います。


円安も円高も、永遠には続かない

自分が取引している相場について、「ドカン!」といったショック相場が起こる前に、理解しておく必要があったのは何か。別な言い方をすると、「ショック相場」でせっかく積み上げてきた利益を「ドカン!」と吹き飛ばすことを回避するために、どんな理解が必要だったか。それは、特別な情報ではなく、「常識」といったことではないでしょうか。

「コツコツドカン!」をもたらす「ショック相場」は、トレンド転換局面で起こるといったパターンがあります。例えば、円安局面が長く続けば続くほど、基本的には円安を前提とした米ドル買い・円売り取引が増えるでしょう。ところが、それが円高へのトレンド転換局面ということなら、円安を前提とした米ドル買い・円売り取引が急転換に追い込まれる、それによって逆方向への「ドカン!」が起こるということです。

その代表例が、1998年に起こった米ドル/円大暴落のケースです。1998年の夏にかけて、米ドル/円は150円に迫るまで上昇しました。今の米ドル/円レートの感覚から考えると、凄い円安だったでしょう。ところが、同年7月に、150円に届かないところで米ドル高・円安は終了。それから間もなく、注目すべきドラマが起こったのです。

米ドル/円が高値を付けてから間もない1998年10月、米ドル/円はほんの3営業日程度で、135円から110円割れ寸前まで、20円以上もの大暴落となりました。なぜそんなことになってしまったのか。

それまで長く米ドル高・円安が続く中で、市場参加者のかなりの割合が大きく米ドル買い・円売りの取引に傾斜していたようです。ところが、突然米ドル安・円高への急転換が起こった。すると、米ドル買い・円売り取引に大きな損失が発生し、その損失を確定させる取引を「損切り」といいますが、この局面の場合は損切りの米ドル売り・円買いが大量に発生したことから、上述のような米ドル大暴落が起こってしまったと考えられます。

つまり、長く続いた一方向への展開では、その方向を前提とした取引が拡大しているため、トレンド転換を前後して相場が逆方向に動く中で、一時的に相場が大きく動くといった「ショック相場」が起こりやすい、ということです。

「常識」で考える相場の転換点

もう一つの代表例として、2015年8月に中国による突然の通貨切り下げがきっかけで、世界的な株価暴落、リスクオフとなった「チャイナ・ショック」があります。当時の米ドル/円のチャートを見てみましょう。2011年10月の75円から、2015年にかけて既に4年以上、50円もの米ドル/円上昇となっていました(図表参照)。円安の過去の実績を少しでも知っていたら当然ですし、そうでなくてもこんなに長く続いた円安は、「常識」で考えると転換するリスクにも注意を払うべきかもしれない、と想像できたのではないでしょうか。

こうお伝えすると、「後から言われても、渦中では対応し切れない」と言われるかもしれません。ですが、永遠に続く相場はないので一方向への相場、この場合は米ドル高・円安が長く、大幅な動きとなっていたのですから、徐々に相場の転換へも注意を払っておく必要があったのではないでしょうか。

相場の転換へ注意を払うとは、この場合なら具体的には「1.米ドル買い・円売り取引での利益をしっかり確定する」こと、その上で「2.徐々に米ドル買い・円売りの取引を縮小する」といったことです。

コツコツと積み上げてきた利益が、ある日突然「ショック相場」に巻き込まれた結果、ドカンと吹き飛んでしまったのは、そもそも利益を確定せず「含み益」のままでいたか、または引き続き一方向へ大きな取引を行っていたためと考えられます。そのため、相場が逆方向へ大きく動いたことで、積み上げた利益を吹き飛ばすほどの大きな損失に見舞われてしまった、というケースが基本でしょう。

今から振り返ると、2011年から4年以上も続いた米ドル高・円安は、実はこの「チャイナ・ショック」の起こる少し前、2015年5月に終わっていました。ただ、それは後になってから分かることで、「チャイナ・ショック」が起こる前、米ドルはまだ高値圏で推移していたので、長く続いてきた米ドル高・円安がもう終わった、と考えていたのは少数派だったことでしょう。

このため、依然として為替市場は米ドル買い・円売りに大きく傾斜した状況が続いていた可能性がありました。そこに「チャイナ・ショック」が起き、リスク回避としてこの場合は米ドル急落となりました。大きく米ドル買い・円売りに傾斜した取引には大量の損失が発生、その損切りのドル売り・円買いが一段と米ドル急落を拡大させるところとなった−−この時の「コツコツドカン!」のメカニズムは、そのような流れだったのではないでしょうか。


「コツコツドカン!」は、運悪く「ショック相場」に巻き込まれたという面もあります。ただ多くの場合、長く続いた一方向への相場の転換期に起こりやすい現象でもあります。一方向への展開が永遠に続くことはないので、相場の転換を警戒し、それに備えていれば「ドカン!」は回避できたかもしれないのです。

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