悲運続いたポルシェ91号車がGTEプロ最後のル・マンで『1016日の空白』埋める。マコウィッキは初優勝に歓喜

 2022年ル・マン24時間レースのLMGTEプロクラスを制したポルシェGTチームのジャンマリア・ブルーニとリヒャルト・リエツは、長らく続いてきた“無冠の日々”にようやく終止符を打った。

 WEC世界耐久選手権に通年参戦するふたりにフレデリック・マコウィッキが加わったトリオは91号車ポルシェ911 RSR-19をドライブし、LMGTEプロ最終年となったル・マンへ出場。姉妹車の92号車がトラブルに見舞われ、首位を争うコルベットが脱落するなどサバイバルの様相を呈したレースで、激戦の末に勝利を収めた。

 この勝利により、ブルーニとリエツのペアは、2019年8月のシルバーストーン4時間レースに勝利して以来、じつに1016日にもわたる未勝利期間に終止符を打つこととなった。

 3年前のシルバーストン戦以来、ポルシェの勝利はすべて92号車によるものだった。

 ブルーニとリエツにとっての困難な“呪縛”は、さまざまな理由により一部のライバルたちに戦いを挑むことができなかった、ここ2年のル・マン24時間レースも含まれている。

「正直なところ、僕らは多くの不運と困難に見舞われ、この2年間はル・マンでまったくもって戦うことができなかった」とリエツはSportscar365に対し語っている。

「この何年かを経て、最終的に再び幸運に恵まれたことは、とてもいい気分だ。ル・マンが僕らを選んでくれたし、コース上ではさまざまなことが起こった。でも、日中の暑さのなかでは、フェラーリと戦えるパフォーマンスを僕らは持っているようだった」

「僕としては、コルベットは別格だったと思う。ただ、彼らには不運があり、僕らは少し恵まれていた」

「最終的には、僕らがこの位置にいる。ポルシェの(GT)ワークスの最終年に勝つことができた。来年は、僕らの誰もがここにいないかもしれないしね」

LMGTEプロを制した91号車ポルシェ911 RSR-19のジャンマリア・ブルーニ、フレデリック・マコウィッキ、リヒャルト・リエツ

 一方のブルーニは、今季第2戦スパのターン1での接触を含め、91号車はしばしば姉妹車のタイトル獲得をサポートする役割を担わされたり、自分たちの勝利のチャンスを不運により奪われたりしてきた3年間の苦悩から解放された、と説明している。

「僕らはとても運が悪かったと思う」とブルーニ。

「うまくいくはずのポジションにつける度に、何かが欠けていたんだ」

「(昨年)最終戦のバーレーンではチャンピオンシップの権利がなかったから、チームメイトをサポートするしかなかった」

「チームメイトとして、チームのために働き、求められる仕事をすることによって、ときには勝つチャンスが生まれるというものだ。我々の5月(のスパ戦)のチャンスは1コーナーで終わってしまったが、今回ようやくクリーンなレースができた」

■「ついにやった!」と初優勝のマコウィッキ

 今回のル・マンでは、LMGTEプロの多くの上位陣がリタイアを余儀なくされた。

 コルベット・レーシングのシボレー・コルベットC8.Rは2台がともに脱落し、92号車はショッキングなパンクにより戦列を離れ、ライバルだったAFコルセの51号車フェラーリ488 GTE Evoも大事なところでパンクを喫してトップから脱落している。

 91号車ポルシェはクラスで唯一トラブルなく走行ができたが、チームが保守的にレースを進めたという見方をリエツは否定しており、マシンにトラブルがなかったのは「奇跡的だ」としている。

「最初から最後まで、すべての縁石を使っていた」とリエツは言う。

「夜間はタイヤを発動させることがでなかった。だから夜はかなり苦労したけど、昼間はかなり強かった。最後の6〜7スティントは、僕らのクルマはロケットみたいに速かった」

「92号車は夜もタイヤの温度を上げることができたが、僕らはそれができなかった。それがはじめのうちに僕らがタイムを失った理由だ」

 ブルーニは次のように付け加える。

「たしかに、レースを見ればコルベットは不運だった。92号車のタイヤにはフラット・スポットがあり、それが(バーストの原因となって)マシンにダメージを与えた」

「どうしようもないことだろう? これもレースの一部だ。うまくいくこともあれば、そうではないこともある」

「これこそが、ル・マンの特別なところなんだ。女神はあなたを認めるときもあるし、認めないときもあるものだ」

 ル・マンにおける3人目のドライバーとして加わったマコウィッキにとっては、これが初のル・マンクラス優勝となった。

「ついにやった! 9年間挑戦して、そしていまやっと表彰台の頂点に立つことができたんだ」とマコウィッキは喜びを表現している。

「何度も2位を獲得し、最速のマシンであることも多かったけど、なかなかうまくいかなかった」

「けど、今日は違った。僕らは最速ではなかったかもしれないが、最も少ないミスで、距離を稼ぐことができた。この勝利はとてもいい気分だ」

 ポルシェ91号車は決勝レースでGTE車両のレコードとなる4769kmを走破し、GTEプロ最後のル・マンを後にした。

2022年ル・マン24時間レースのLMGTEプロクラスを制したポルシェGTチーム91号車ポルシェ911 RSR-19陣営

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