歩くだけでお金が稼げる「STEPN」が暴落ーー暗号資産は投機なのか?

暗号資産は単に値動きを見て売買するだけだ、と思っている方も少なくないでしょう。暗号資産を取引所だけで取引していると、そのような局所的な目になってしまうかもしれません。しかし、実際には「Dapps(Decentralized Applicatiion)」と呼ばれる分散型アプリがブロックチェーン上に数多く作られていて、そのなかで暗号資産は様々な形で活用されています。

最近では分散型金融(DeFi)やノンファンジブルトークン(NFT)が注目されるなかで、暗号資産の数が2万以上にまで増えていますが、それとともにDappsの数もまた1万以上に増えています。

このように話してもDappsを触ったことがない方が大半だと思います。現状、国内の取引所ではDappsへのアクセスに対応していません。では、私たちはどのようにしてDappsを利用することができるのでしょうか。

以下では、運動して稼ぐことができるMove2Earnアプリとして注目されている「ステップン(STEPN)」というDappsを例に、その使い方や注意点について解説していきます。


「STEPN」から学ぶDappsの使い方とは?

オーストラリアの企業・FINDSATOSHI LABが運営するステップンは、大前提として「ソラナ(Solana)」というブロックチェーン上に構築されたDappsです。ユーザーはアプリ内のマーケットプレイスでNFTとして管理されるデジタルスニーカーを購入し、現実で歩いたり走ったりすることで、スニーカーレベルと移動距離に応じて独自の暗号資産である「GST(Green Satoshi Token)」と「GMT(Green Metaverse Token)」を稼ぐことができます。

GSTはデジタルスニーカーのレベルアップや修復、配合などに使うことができるアプリ内の基本的な通貨であるのに対し、GMTはアプリ上位者に配布される運営や開発方針について投票する権利が与えられる「ガバナンストークン」としての通貨になります。運動して稼いだこれらの暗号資産はアプリ内で使い続けることもできますが、ソラナや米ドル連動型ステーブルコイン「USDC(USD Coin)」に交換してアプリ外に持ち出すこともできます。

このようにステップンの基本的な仕組みを見ると、Dappsを利用するためには暗号資産やNFTを管理・取引するウォレット機能が必要であることがわかります。ステップンの場合にはモバイルウォレットとしての機能がアプリ内に備えられていて、そこに取引所からソラナを入金することで参加条件となるデジタルスニーカーのNFTを購入することができます。

ウォレットの中には、様々なDappsに対応したサービスもあり、その1つである「メタマスク(Metamask)」というブラウザウォレットは、月間アクティブユーザー数で3,000万を超えており人気となっています。しかし、ステップンの時もそうでしたが、メタマスクでDapps接続するためには取引所でイーサリアムなどを購入してからそこに送金しなければならず、暗号資産に馴染みのない方にとっては利用のハードルが高いと感じるかもしれません。

「STEPN」の暴落から学ぶDappsの注意点

Dappsの人気の浮き沈みとともに、暗号資産の価格も大きく変動しています。ステップンが発行するGSTとGMTも世界中の多くの人が参加するなかで価格を大きく伸ばしていきました。特にGMTを発行した2022年3月以降はメディアでも紹介される機会が増えて、価格が数十倍にまで膨れ上がりました。

しかし、2022年5月に入ってからは、暗号資産市場全体のリスクオフの流れもあってか、ステップンの新規ユーザー数が減少し、GSTとGMTの価格も大きく下落しました。ステップンが規制の影響で中国ユーザーを締め出したことでさらに利用が落ち込み、直近のGSTは発行時の価格より低い水準で推移し、GMTも高値から5分の1程度にまで価格を下げています。

このように、ほとんどのDappsには独自の暗号資産が存在しているため、ユーザーとして暗号資産の価格変動リスクを負うことになります。ステップンの場合、「歩くだけでお金が稼げる」と言われればきこえは良いですが、初期投資としてデジタルスニーカーを購入するために10万円以上かかることもあり、原資を回収するまでに相応の時間がかかってしまいます。たとえGSTやGMTでお金が増えた気になっていても、それらの価値が暴落してゼロになる可能性もあるのです。

また、Dappsでは取引所とは違って基本的に自身のウォレットで資産を管理しなければなりません。最近ではフィッシング詐欺によってウォレット情報が盗まれてしまう事件も起きており、第三者に秘密鍵が漏れてしまった場合には資産を失うリスクもあります。ステップンでせっかくデジタルスニーカーを強化しても、そのNFTが盗まれてしまったら元も子もないですよね。


ステップンを例に、Dappsの使い方と注意点について触れてきました。

今では金融に限らず様々な分野のDappsが開発されており、これまでにはないサービスが次々に誕生しています。その一方でやはり暗号資産に特有のリスクが存在し、なかなか普及が進まず、一部では投機色が強いことも確かです。

しかし最近では、メタマスクをはじめとするDappsウォレットがクレジットカード決済を導入する動きや、コインベースのような大手取引所がDappsへの間接的なアクセスを提供する動きもあり、少しずつDappsを気軽に触れる環境が整いつつあります。近い将来、Dappsもアップルやアンドロイドのようなアプリストアと並んで利用ができるものに発展しているかもしれません。

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