【tvk吉井アナ】DeNA今永投手ノーノー、次の快挙はぜひ生で伝えたい

24日の広島戦で解説予定の斉藤明雄さん(左)と吉井さん

 こんなにも深く長い安堵(あんど)の息を吐いたのは、いつ以来でしょう。

 6月7日、札幌ドームでの日本ハム戦。今永昇太投手が球団として52年ぶりとなるノーヒットノーランを達成しました。

 私がtvkのアナウンサーとなったのは1996年。中継現場で無安打無得点試合を実況担当として2度目撃し、ベンチリポート担当としても2度遭遇しましたが、全てベイスターズが本拠地の横浜スタジアムで喫したものでした。

◆「誰か、お願い…」

 最初は97年9月2日です。逆転優勝への機運が高まる中、首位ヤクルトの石井一久投手(現楽天GM兼監督)に手玉に取られました。ヒーローインタビューで「これ、神奈川の放送ですよね。喜んで大丈夫ですか」と自由奔放に答える石井投手を呆然と見つめていた記憶があります。

 2度目は2000年4月7日、中日のバンチ投手です。相手には実に20安打もされた試合でもありました。ここまでの2度はいずれもベンチリポートを担っていましたが、伝える材料に窮して「開店休業」状態になっていました。

 さらに深く心に突き刺さったのは球団が横浜DeNAとなった初のシーズン、12年4月6日のことでした。この日は実況担当でしたが、広島の前田健太投手(現米大リーグ・ツインズ)になすすべなし。七回以降は「誰か、お願いします…」と念じながら実況した覚えがあります。それにしても見事な投球でした。

◆手書きの資料ノート

 その1年後の13年6月28日にも、まさかは再び起こりました。相手は中日の山井大介投手。何と1回から7点のビハインドを背負うゲームで、それだけに「いつかヒットは出るだろう」という空気が漂っていたのですが、頼みの代打であるラミレス選手(前監督)もレフトフライに終わりました。

 2年連続でベイスターズが沈黙した試合を担当した私に配慮したのでしょうか。放送終了後、声を掛けてくる中継スタッフは少なかったような気がします。その後、20年8月15日にもヤクルトの小川泰弘投手が横浜スタジアムで達成していますが、この日は中継担当がなくテレビを見ていました。

 私が実況中継用に使用する手書きの資料ノートには、いざという時のための備えに、次の完全試合や無安打無得点試合、サイクルヒットがプロ野球史上何人目、何度目に
あたるかという数字を記述しています。もちろんベイスターズでは何年ぶり、何人目になるかも併記しています。

◆ついに更新する日が

 その数字は快挙が遂げられるたびに増えていきますが、「ベイスターズでは―」の欄を見るとなかなか寂しい限り。昨年の8月25日に牧秀悟選手が成したサイクルヒット以外の項目は、全く変わりません。中継に関わった1996年から四半世紀以上、毎年新しく作成する資料ノートの無安打無得点試合の項目には、70年のホエールズ時代に成し遂げた鬼頭洋投手の偉大な名を何度も何度も書き続けてきました。それが、ついに更新する日がやってきたのです。

 「次のノーヒットノーランは、ベイスターズ投手では今永昇太投手以来5人目」。そう記した私は深い感慨に包まれたのと同時に、ベイスターズ投手による次の快挙達成の瞬間をぜひ生で伝えたいとの思いに駆られました。できれば、かつて実況した試合で相手にしてやられた数と同じ2度ほど…、と願うのは欲張りでしょうか。

 交流戦が終了し、再びセ・リーグの熱戦がスタートします。tvkの中継も6月24日(金)の広島戦から再開します。私は熱い実況を心掛けながら、心の中で歴史的な試合が訪れることをきっと願っているでしょう。

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