富士への来日危ういグリッケンハウス「我々は非常に小さな会社だ」。WECは「柔軟に対応」

 WEC世界耐久選手権は、ハイパーカークラスに参戦するグリッケンハウス・レーシングが2022年シーズン後半にレース欠場を余儀なくされる場合、「柔軟に」対応するという。

 FIA耐久委員会のリシャール・ミル委員長は、グリッケンハウスのル・マン・ハイパーカー(LMH)が将来的に世界選手権への参加を続けられるよう、譲歩する用意があると語った。

 これは、『フルシーズンエントリーするLMHチームは少なくとも1台の車両で全レースに出場しなければならない』とする、これまでのWECの厳格な規約を覆す対応だ。

 このルールはレギュレーションに明記されたものではなく、2台のプジョー9X8 LMHがフルシーズンエントリーリストには記載されながらも第4戦モンツァまでデビューしない決定をしたことにより、すでに破られている。

「通常、我々はすべてをルールどおりに行う」とミルは述べている。

「だが、我々は常にフレキシブル(柔軟)であろうとするし、アラカルト(個別)でいくつかの対応を行う。いくつかのマニュファクチャラーが問題や予算による制約を抱えていることは理解している。従って、我々の在り方を適合していく」

 9月に開催される富士ラウンドを欠場すると噂されているグリッケンハウスと、WECが協力していく意思があるのかという質問に対し、ミルはシリーズによるサポートを認めている。

 ル・マン24時間レースにおける初の表彰台を獲得したばかりのチームは、7月の第4戦モンツァ6時間レースの後の参戦を明確にはしていない。モンツァ戦には1台のグリッケンハウス007 LMHで挑むが、そのドライバーラインアップは未定だ。

「グリッケンハウスが(シリーズに)いることは、とてもハッピーだ」とミルは言う。

「彼らはとても素晴らしい人々だ。我々はIMSAの友人たちに、IMSAのレース(※2023年以降のGTPクラス)でグリッケンハウスを受け入れるよう、働きかけている。なぜなら、彼らはそこにいるにふさわしいからだ。彼らはとても勇気がある。拍手を送るべきプログラムだと思う」

総合3位の表彰台に立つ709号車のクルーと、チームオーナーのジム・グリッケンハウス

 チームオーナーのジム・グリッケンハウスは、ハイパーカープログラムを前進させるために何ができるのかについて、まだ「解明しようとしている」と語っている。

「問題は、我々が非常に小さな会社だということだ」とグリッケンハウス。

「私には多くの従業員、そして株主がいる。ニュルブルクリンク(24時間)とバハ(1000)のレースに出場すれば、生産能力を落とすことになる。株主たちは当然、『WEC、ル・マンとはどんなものだ?』と言っている」

「(WECへの参戦が)私個人にとって重要なことであり、やりたいことであるという点は、彼らも理解してくれている。だがある時点において、会社の利益の大部分を犠牲にして、自分がやりたいからレースに出る、というわけにはいかなくなる」

「だから、そこにはいくつかのことが混在しているのだ」

「自分の立ち位置、できること・できないことがはっきりしたら、ACOとWECに行って、何ができるのかについて伝えるつもりだ。良心に照らして考えれば、私にできるのはセブリングとル・マンだけなのかもしれない。私(たち)が必要とされているのか、いないのか。それを理解したい」

「我々は、一日一日を大切に過ごしている。投資家や、その他興味を持っている人々と、シリアスなミーティングを重ねている。次の2週間のうちに、我々の未来がより明確になると思う」

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