投資するなら知っておきたい「恐怖指数」ーーリーマン、コロナ…暴落時の数値と現状は?

6月15日(水)に米連邦準備制度理事会(FRB)は通常の3倍の0.75%の大幅利上げに踏み切りました。一度に0.75%の利上げを決定するのは1994年以来のことです。先週発表された5月CPI(消費者物価指数)の伸び率が前年同月比8.6%上昇と、市場予想を上回るインフレ加速を示す結果だったことで、ダウ平均はFOMCでの0.75%の利上げを織り込む形でFOMC発表前の5日間で2,800ドルを超える下げとなっていました。

次の7月FOMCでは0.5ポイントか0.75ポイントとなる見通しが示されたことで、ややタカ派(金融引き締めの政策寄り)だったように感じましたが、悪材料が出尽くしたことで15日の米市場は反発しました。ナスダックは3月7日(月)に弱気相場入りしましたが、今回のCPIショックとも言える下落でS&P500も弱気相場入りを示す水準となりました。

このように、今年は値動きの荒い、ボラティリティの高い相場が続いています。


価格変動の度合いを示す「ボラティリティ」

ボラティリティというのは、一般的に価格変動の度合いを示すワードです。

「ボラティリティが大きい」というのはその商品の価格変動が大きいことを意味し、「ボラティリティが小さい」という時は、その商品の価格変動が小さいことを意味しています。投資においては、このボラティリティを標準偏差で数値化し、それをその商品のリスクの度合いとして捉えるのが一般的となっています。つまり、ボラティリティが大きい商品はリスクが高く、ボラティリティーが小さい商品はリスクが低いと判断されるわけですね。

また標準偏差で算出したボラティリティが大きいということは、実際のリターンと期待収益率(予想されるリターンの加重平均値)とのブレが大きくなる可能性が高いことを意味します。価格変動のブレの大きい商品は、一般にリスクが高いと判断されます。

ボラティリティはどう判断する?

ボラティリティが高いかどうかを示す指数としてVIX(ヴィックス)指数が挙げられます。
VIX指数はボラティリティ・インデックス(Volatility Index)の略で、アメリカのCBOE(シカゴ・オプション取引所)がS&P500を対象とするオプション取引の値動きを元に算出、公表しています。

ボラティリティ(値動き)が大きい相場では、値動きが激しく急落急騰が起きやすい状態で、株価は乱高下します。特に相場が暴落する時は、ボラティリティが急激に大きくなることで大きな損益を抱えるケースも出てくるので、恐怖を感じる投資家も増えますよね。そのため、VIX指数は投資家心理と密接で「恐怖指数」とも呼ばれています。

VIX指数はパーセンテージ(0-100)で表され、高いほど投資家が相場の先行きに不安感を抱いているとされています。通常は10から20の間で推移するとされており、株価急落につながるのは20が節目と見られています。

暴落時には30や40に吹き上がると言われますが、今年は30を超える水準となることが多々ある状況です。「○○ショック」で株価が急落することもあれば、「トランプラリー」(※)のように株価が上昇してVIX指数が上昇することもあります。
※2016年11月の米国大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利したことを機に、世界的な株高傾向となったこと。

過去のボラティリティが高い相場

過去の主な高値としては2001年の米同時多発テロが49.35、2003年のイラク戦争勃発が30.40、2008年のリーマン破綻が42.16、史上最高値が2008年10月24日の世界金融危機で89.53です。その後も2011年10月のギリシャのデフォルト危機で46.88、2015年8月のチャイナショックが53.29となりました。直近では2020年3月のコロナ・ショックで85.47となっています。

一方で、VIX指数が10を割り込むほど低下するとリスクオン(積極的にリターンを求め、リスクを取ることが好まれる相場状況)の流れになりがちです。

しかし投資家が安心している状況で、低水準だった2006年末のあとは、ご存知リーマンショックがありましたので、10を割り込む水準になった際も「そろそろボラティリティ高い時期が来るかもしれない」と、慎重に考えると良いかもしれません。

日本市場でも、ボラティリティの大きさを表す指数があります。VIX指数と同様の手法で、2010年11月から日経平均について算出されるようになった指数が「日経ボラティリティインデックス(日経VI)」です。日本株に投資されている方はこちらもチェックすると投資の参考になるのではないでしょうか。

6月13日週「相場の値動き」おさらい

6月16日(木)のダウ平均は、前日比741ドル安の2万9927ドルと大幅に下落。節目の3万ドルを割り込み、年初来安値(2020年12月以来の安値)をつけました。

6月のFOMCが通常の3倍の0.75%の大幅利上げ、次の7月FOMCでは0.5ポイントか0.75ポイントとなる見通しが示されるタカ派な内容だったものの悪材料でつくしで15日の米市場は反発。ただ一夜明けて改めてリセッション懸念が広がった形のようです。

またスイス中銀が2007年以来はじめての利上げをしたことや、英国も政策金利引き上げを決定したことも世界経済の先行き懸念につながっているよう。

6月17日(金)の日銀への注目度が一層上がったと感じましたが、日銀金融政策決定会合では大規模緩和を継続する方針、現状維持となりました。

6月17日(金)の日経平均株価は、前日比468円20銭安の2万5963円00銭。節目の2万6千円をあっという間に割り込みました。6月10日(金)の日経平均株価は2万7824円29銭でしたので週間では1861円29銭の下落でした。

なお、執筆している2022年6月17日(金)15:30時点でのVIX指数は32.84、日経VIは27.31となっています。

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