「核軍縮を進めたいなら岸田総理は締約国会議に参加するべき」 ノーベル平和賞ICANフィン事務局長 JNN単独取材

核兵器禁止条約の初めての締約国会議は、21日にオーストリアのウィーンで始まります。

RCC

唯一の戦争被爆国・日本は条約に参加せず、締約国会議へのオブザーバー参加を見送ることを決めています。

理由について岸田総理は、条約に核兵器国が参加していないことをあげ、「現実的な核軍縮・不拡散の取り組みを進めることから始めるべきだ」としています。一方で「将来は条約に核兵器保有国を結び付けられるような世界を実現したい」とも述べています。

締約国会議の開会が迫るウィーンで、ノーベル平和賞を受賞したICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンのベアトリス・フィン事務局長が、JNNの単独取材に応じました。

フィン事務局長は「核保有国と非保有国の橋渡しをするというのであれば、岸田総理にはウィーンに来て議論を聞いてほしかった。心から核軍縮を進めたいと願うのなら、締約国会議に参加するべき」と話しています。
(聞き手/RCC中国放送小林康秀)

(小林)
締約国会議が間もなく始まります。それに先立ち、ウィーンでICANフォーラムも始まった。いまのお気持ちは?

(フィン事務局長)
多くの方々が集まって、それよりさらに多くの方々がオンラインで見てくださることに、思いが詰まります。さらに日本と、オーストラリアへもオンライン(ハブ)でつながり、そこでも見てくれている。このような対話をするということが、いまこそすごく大事なことだと思います。

なぜなら、ロシアがウクライナを侵攻し、核を使うという脅しをかけているときに、全世界がそれにおびえている。核の脅威が、実際のものだということを再度認識した時期だからこそ、この対話ができて良かったと思っています。恐怖を行動に変えていく時期に立ち会えていると思うので、いまこのように話しをすることが、これからのあり方を変えていくと信じています。

(小林)
唯一の戦争被爆国の日本は、核兵器禁止条約の締約国議にもオブザーバーを参加しない。いまの岸田文雄総理は広島選出だがそのことも踏まえてどう思いますか。

(フィン事務局長)
広島から選ばれた首相であることも含め、被爆者がどう思っているか…それは、今回の締約国会議のオブザーバー参加ということだけではなく、批准国として参加してほしいと思っているということは、岸田総理本人もよくよくご存知だと思います。

RCC

私の思いとしては、もっとやってほしい。G7サミットを広島に誘致したことは喜ばしいことで、重要なステップ、良い兆候だが、それだけでは十分ではないと思います。

岸田総理は核保有国と非保有国の橋渡しをしたいと言われていますが、そのためにはウィーンで議論を聞いてほしかった。世界の人々、締約国会議に集まった国々もそうですし、被爆者もそうですし、核実験の被害者もそうですし、世界のいろいろな団体がどんなことを言うのかを、ぜひ耳を傾けてほしかったと思っています。なので、ぜひ火曜日(締約国会議開会の日)に、いろんな意見を聞くために岸田総理がきてくれることを期待して、私たちは待っている。心から核軍縮を進めたいと願うのなら、火曜日からウィーンで始まる第一回締約国会議に参加するべきです。

(小林)
被爆国日本の中で、アメリカの核兵器を共同運用する“核共有”の議論も出ていますが、これについてはどう感じていますか?

(フィン事務局長)
いまロシアのウクライナ侵攻を受け、どうやって自分たちの国を守ろうかと考えていると思うのですが、国というのはそれぞれ、世界に対して、自分たちのアクションが世界にとって、どのような意味を持つのかを考える責任があると思っています。

多くの国々が、核に対しての依存を高めようとしていますが、あなた達はいったい誰のために働いているのですかと、それぞれの国に聞きたいです。

ロシア、中国が核兵器をもっと持とうとか、イギリスが増強しようとか、ベラルーシが憲法改正をしようとか、フィンランドやスウェーデンが核の傘の中に入ろうとしていますが、それぞれが、危険を増大させることだと思います。私たちはいまこそ、欺瞞をやめるときだと思っています。

ロシアの侵攻を見ていると、核兵器を持っていようと、持っていまいと、核があること自体が、どちらにとっても安全なことではないと分かると思います。ロシアに、このまま核兵器を持ち続けることを許すと、それは、中国かもしれないし、アメリカかもしれないし、分からないけれども、核兵器がある以上は、同じようなことがまた起きてしまうと思います。

RCC

いまこそ私たちは核軍縮を本気で進めないといけないと思いますし、これまではお互い、リーダーたちの信頼感みたいなものを頼りにしていましたが、結局そんなものがあてにならないということが、今回、本当に分かったと思います。

(小林)
被爆者が高齢化していますが、若い人も声を上げ始めています。被爆地広島に期待することはありますか?

(フィン事務局長)
広島というのは、やはり重要な場所であると思いますし、実際の被爆の経験を持つ歴史もそうですし、個人的な思いをたくさん持つ場所だと思います。新しい世代のお話もされましたけれど、彼らは核攻撃の影の中で育った子どもたちで、非常に注目していると思います。経験された方からお話を聞けるというのは、本当に時間はそんなに残されていません。

どんなことを覚えていらっしゃるのか、どんなことを残していかれるのか、専門家の人々から、どれほどの話を聞けるかが大事になっています。もちろん、広島がそのような思いを残して行こうとたくさんの努力をしていこうとしているのは分かっていますが、是非それは、次の世代だけではなくて、世界のリーダーたちも同じように聞いてほしいと思っています。

RCC

G7のリーダーたちを広島に呼ぶということは知っていますが、それだけでは足りなくて、ぜひ世界中の指導者に、広島に訪れてほしい、せっかくですから今のうちに、渡航ができるようになった、いまだからこそ、広島にいって、できるだけ早く、被爆者から直接の声を聞いてほしいです。

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