陸上・男子200 臼木(希望が丘高等特支)「楽しかった」 インハイ挑戦、笑顔で幕 全九州高校大会

【陸上男子200メートル準決勝1組】力を振り絞って走る臼木(希望が丘高等特支)。インターハイへの挑戦が終わった=佐賀市、SAGAサンライズパーク陸上競技場

 こだわり続けた夢舞台に届かなかった。だが、敗れた直後の臼木大悟(希望が丘高等特支3年)の口から出た言葉は「楽しかった」だった。特別支援学校から長崎県勢初となるインターハイ出場(地元枠除く)を狙った「日本記録保持者」の挑戦は、笑顔で幕を閉じた。
 陸上のインターハイ北九州地区予選、男子200メートル準決勝。最も内側のレーンを走った臼木は、序盤に出遅れて22秒64の組7着に終わった。今月上旬の県高総体を3位で通過。春先のけがから復調の兆しを見せていたが、全国へ続く最後の関門を突破できなかった。
 小学生のころから足が速く、自己ベストは100メートルが10秒77、200メートルは21秒54。昨夏、日本知的障がい者(ID)記録の対象となる登録を済ませると、100メートルと200メートルで立て続けに従来の記録を更新した。パラリンピックに向けた新星の登場に注目が集まった。
 それでも、こだわってきたのは、あくまでもインターハイ。ずっと競い合ってきたライバルたちと同じ土俵で勝負する道を選んだ。ピカピカの陸上シューズは型崩れしないように中敷きを詰め、脱いだユニホームはいつも几帳面にたたむ。陸上に懸ける思いは誰にも負けていないつもりだ。
 大きな目標に区切りがつき、今後は少しずつ障害者スポーツと向き合っていく。専門にしてきた100メートル、200メートルはパラリンピックの種目がないため、400メートルに挑戦しようと考えている。183センチの長身を生かしたストライド走法が持ち味の臼木にとって、適性がある種目と言える。
 「正直言えば、やっぱり悔しい。でも、これからを考えると得難い経験になったのかな」。この悔しさはきっと、未完の17歳スプリンターを大きく成長させる。


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