TGR WRCチャレンジプログラム2期生の大竹、小暮、山本がフィンランド選手権で欧州ラリーデビュー

 勝田貴元に続く日本人WRC世界ラリー選手権ドライバーの育成プログラム、TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの2期生である大竹直生、小暮ひかる、山本雄紀が6月17~18日、北欧フィンランドで開催された国内選手権第5戦に出場。ヨーロッパでのラリーデビューを果たした。

 多くの候補者の中から今年2月にフィンランドで実施されたセレクションを経て、TGR WRCチャレンジプログラムへの参加が決まった大竹、小暮、山本の3名。彼らはこの4月からフィンランドでの生活を開始するとともに、それぞれ経験豊富なフィンランド人コドライバーとペアを組んでトレーニングに励んできた。

 また、直近の数週間はラリーにおいて、きわめて重要なツールのひとつであるペースノートのトレーニングにも取り組み、二輪駆動のルノー・クリオ・ラリー4でのテストを重ねてきた。

 そんな彼らがフィンランド国内選手権の一戦である『ポフヤンマー・ラリー』に、TOYOTA GAZOO Racing WRTネクストジェネレーションから参戦した。同ラリーはフィンランド西部に位置するセイナヨキ周辺に設定された8つのステージ、合計128.78kmで争われる高速グラベル(未舗装路)ラリーだ。

 これが欧州ラリーデビュー戦となる大竹、小暮、山本の3名は、ラリー開始前にレッキと呼ばれるコースの下見を行い、一からペースノートを作成していった。実戦ではドライ路面で行われたレグ1から一転、6SSを走行する土曜のレグ2は激しい雨の中での戦いになるなど、コンディションが激しく変わるなかでのラリーを経験。

 それぞれのペアが順調にラリーを進めていったが、SS4の終了時点で3人の中でトップとなるSM4クラス6番手につけていた大竹/マルコ・サルミネン組が、マシントラブルに見舞われリタイアとなってしまう。

 一方、山本/ミイカ・テイスコネン組と小暮/トピ・ルフティネン組は大きなトラブルなくラリーを走破。山本組がクラス4位、小暮組がクラス5位でラリーを終えた。

クラス4位で完走した山本雄紀/ミイカ・テイスコネン組と、同5位となった小暮ひかる/トピ・ルフティネン組(ともにルノー・クリオ・ラリー4)
小暮ひかる(左)山本雄紀(中央)、大竹直生(右)

「今回のラリーは、ドライバーにとってとにかく新しいことばかりなので、順位やスピードといった点での目標は設定しなかった。テストで見ていたような安定したドライビングをし、ラリーを完走してできるだけ多くの経験を得てもらいたいと思っていたんだ」と語るのは、プログラムのチーフインストラクターを務めるミッコ・ヒルボネン。

「結果的に、一番難しかったのは今回のコンディションだった。金曜日は陽が低く、ダストが多いコンディションで、土曜日は雨と泥のコンディションとなった。このコンディションが彼らの自信とリズムに確実に影響したので、簡単なスタートとはいかなかった」

「良かったのは、ユウキ(山本雄紀)とヒカル(小暮ひかる)は完走して経験を得られたこと。残念ながらナオ(大竹直生)はテクニカルトラブルにより最後まで走り切れなかったが、我々のデビュー戦としては全体的に満足できる内容だった」

「これからオンボードビデオとデータを分析し、今後力を注ぐべきポイントを把握し、次に備えていく」

 引き続き、次の実戦に向けてトレーニングとテストを行っていく大竹、小暮、山本の3選手。欧州ラリーデビュー戦を終えた彼らのコメントは以下のとおりだ。

●小暮ひかる
「金曜日の夜は陽が低く、前走車からの砂埃で前がとても見づらかったです。また、翌日は泥が多く、とても滑りやすくなりました。ステージ毎にコンディションが変わる、とてもチャレンジングなラリーだったので完走できて本当にうれしいです。とても良い経験をさせていただきました」

「次のラリーではより自信を持ってドライビングできるよう、とくにペースノート中心に、改善に向けてしっかり準備していきます。チームとコドライバーのトピ(・ルフティネン)のサポートに感謝しています」

●大竹直生
「最後まで走ることができなかったのは残念でしたが、とても良い経験になりました。このような高速ラリーで戦うのは初めてでしたし、とても難しいコンディションでした」

「自分のペースノートが良くなかったと思ったところがいくつかあり、とくにブレーキングポイントなど、今後の改善につながる新しいことをたくさん学びました。チームと、経験豊富でたくさん助けてくれているコドライバーのマルコ(・サルミネン)にはとても感謝しています」

●山本雄紀
「フィンランドでの最初のラリーを完走できてとてもうれしいです。チームとコドライバーのミイカ(・テイスコネン)に感謝を伝えたいです。ラリー中は色んなことが起き、多くの異なるコンディションを経験することができました。コンディションがいい時は良いリズムで走ることができましたが、滑りやすい路面になった時はグリップが効かず、良いリズムで快適に走ることは難しかったです」

「一番大変だったのはペースノートの情報だけで前方の道をイメージすることでした。それはペースノートが正確でなかったからとも言えるので、次のラリーまでにそこをもっと改善したいと思います」

山本雄紀/ミイカ・テイスコネン組(ルノー・クリオ・ラリー4)
大竹直生/マルコ・サルミネン組(ルノー・クリオ・ラリー4)

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