41歳、持病ありの会社員、いずれは天涯孤独に。老後どれくらいお金が必要?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、41歳、会社員の女性。体調を崩しがちだという相談者。母が他界したら身寄りがなくなるため、入院などの際に困ったりしないように保証会社に入ることも検討していますが、どのくらいのお金を用意するべきでしょうか? 他に対策は? FPの飯田道子氏がお答えします。


41歳会社員、身寄りがありません。老後、どれくらいお金が必要なのか不安です。

ガンになり手術をきっかけなに次々と合併症となり定期的に体調が悪くなります。母親しか身寄りがなく、母親がいつか亡くなった後、入院や手術を受ける際に保証人がいなくなってしまいます。調べると保証会社のようなところがあるらしいことはわかりましたが、依頼するためにはどれくらいお金がかかるのかわかりません(60歳までにどれくらいお金を準備すればいいのか)。

また、今の収入と生活でも節約状態なので、どこを削れば貯蓄が増えるのかがわかりません。ご教示ください。

現在正規雇用、仕事は頑張って65歳まで続けるつもりです。ただし、60歳以降は給料は約70%くらいに減り、ボーナスも無くなるので、今の貯蓄額を続けることは現状はできないと考えています。

現状の生活と貯蓄を続ければ、60歳段階で約2,600万円貯蓄(現金約2,000万円、株約350万円、iDeCo約300万円。※株とiDeCoは元金で計算した場合)、その他退職金で約300万円くらいもらえる予定です。

【相談者プロフィール】

・女性、41歳、会社員、独身

・住居の形態:持ち家(マンション、東京都、一人暮らし)

・毎月の世帯の手取り金額:17万5,000円

・年間の世帯の手取りボーナス額:30~70万円(コロナで業績が悪化し、あと4、5年は30万ほどしかもらえないかもしれない)

・毎月の世帯の支出の目安:9万5,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:3万円

・食費:3万円

・水道光熱費:1万2,000円

・保険料:1万5,000円(1万3,000円は貯蓄型保険。2,000円はがん保険。貯蓄型保険は55歳で満期で250万円もらえる。この保険の満期以降、医療保障はなくなる)

・通信費:1万円(2年契約のしばりがある。契約満了とともに格安プランに変更予定、減額5,000円程度で検討中)

・その他:医療費7,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:3万1,000円

・ボーナスからの年間貯蓄額:30万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):500万円

・現在の投資総額:3万2,000円(株2万円、iDeCo1万2,000円)※毎月積み立て

・現在の負債総額:0円

飯田:今回は、老後、どれくらいお金が必要なのか不安を抱いている41歳の相談者様です。ガンの手術をきっかけに合併症を繰り返し、定期的に体調が悪くなってしまうとのこと。身寄りが母親のみのため、母親に万一のことがあったときには、入院や手術を受ける際には保証会社に依頼することを考えており、どれくらいの金額がかかるのかも不安とのことです。その他、今の収入と生活でも節約状態ではあるものの、どこを削れば貯蓄が増えるのか知りたいということです。保証会社に依頼する場合は、どれくらいの金額がかかるのでしょうか。また、どのように貯めていけばいいのか、考えてみましょう。

病院は、身元保証人がいないことを理由に入院を拒否できない

身寄りがいない場合、入院時の身元保証人が立てられないのは、とても心配ですよね。ただし、医師法では、「医師法19条1項 診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」とされています。このため、身元保証人がいないからといって、入院できない等の事態はあってはなりません。医療機関に対しても2018年4月27日付け厚生労働省医政局維持課長通知を行っており、身元保証人がいないからと入院を拒否する場合は、医師法に抵触するという見解を示しています。

しかしながら、病院としては身元保証人がいる方が安心ですし、実際には、対応に違いがあるようです。私のケースを申し上げると、12年前に身元保証人なしで入院したことがありましたが、スムーズに手続きができました。ただ、身元保証人を立てていないことから、病院へ入院費を充分にカバーするだけのお金を預けて、乗り切りました。ただこれは、いわゆる入院保証金としてではなく、手持ちのお金を預けただけでした。

相談者様の場合、継続して同じ病院へ通われていると思います。身元保証人がいない場合、その病院でどのような対応ができるのか、確認しておくと安心ですね。

身元保証人がいない場合、どのように対応するべきか

民間の身元保証会社の場合、金額はさまざまです。たとえばA社の場合、初期費用は8万円~。月額1,500円~となっています。具体的な金額は、個別相談によって提示されますので、ご自身で望むサポートを明確にして、選ぶ必要があります。相談のみは無料ですので、まずは、具体的な金額を提示してもらって、どのプランを利用するのか、他の方法で対応するのか、考えてもよいでしょう。

民間会社を利用する以外の方法

身元保証人がいない場合、民間の会社の他にも利用できるものがあります。

【入院保証金を利用する】
入院保証金は預り金とも言い、入院したときに病院から提示された預り金を支払いますが、退院時には差額を精算します。病院のメリットとして、未収金の発生を予防できますので、身元保証人に相当する連帯保証人が不要です。

その他、入院費をクレジット払いにし、クレジットカードの番号を登録しても、身元保証人は不要になります。いずれの場合も、病院への確認が必要です。

【成年後見制度を利用する】
成年後見制度には、任意後見制度と法定後見制度の2つがありますが、この場合、自分で判断できるうちに契約を結ぶ任意後見制度を利用します。

任意後見制度にかかる費用は、申立そのものは手数料含めて数千円ですが、自分が信頼している人を後見人として選ばなければなりません。身寄りがない場合には、弁護士などに依頼する必要があります。その場合、ケースにより異なりますが、契約を結ぶために20数万円がかかり、毎月数万円の費用がかかります。

弁護士事務所のなかには、無料相談を行っているところもありますので、どのようなシステムになっているのか、自分にとっての費用はいくらかを確認してもよいですね。また、条件に当てはまれば助成が出ることもあるので、自治体の情報も確認してみましょう。

健康を維持することに注力を!

相談者様の支出を拝見しましたが、特に削るような場所はありません。持ち家ですし、相談者様が算出された、「60歳段階で約2,600万円貯蓄」という金額に加えて公的年金が受給できれば、特に不安を感じる必要はありません。

現在の不安は、身寄りのないことと、健康のことだと思います。身元保証人に関しては、上記の方法を検討してみてください。

健康については主治医と不安な気持ちをシェアし、どのように対処するべきかを一緒に考えてもらいましょう。また、今も気を付けられていらっしゃると思いますが、健康を維持するためにできること、食事や運動などを行い、定期検診以外には病院へいかなくても済むようにしてください。

病気を抱えて年齢を重ねることは不安だと思います。1人で抱え込むことなく、信頼できる友達などにも、相談してもいいかもしれません。

心配することは、精神的にも身体的にも負担がかかります。計画的に行動できる相談者様ですので、前向きに進むことを考えてみてください。陰ながら応援しています。

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