【薬剤師WG】「調剤業務の一部外部委託」法改正へ/一包化、三次医療圏内で

【2022.06.23配信】厚生労働省は6月23日、「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」(WG)を開催し、とりまとめ(案)を提示した。おおむね事務局案が了承された。外部委託に関してはまずは一包化業務に限定し、委託先は委託元薬局と同じ三次医療圏内とする。現在、外部委託は法律で認められていないことから法改正を見込む。法改正がされたのちに、安全性や対人業務拡充の効果検証、対象業務や委託先の範囲についてさらに議論を行う方針。

とりまとめ(案)は、副題として「薬剤師が地域で活躍するためのアクションプラン(仮)」とした。

大きな論点となってきた「調剤業務の一部外部委託」に関しては、次のように記述した。


対物業務の効率化を図り、対人業務に注力できるよう、調剤業務における調製業務の一部外部委託(本とりまとめにおいて「調剤業務の一部外部委託」という。)の実施が規制改革推進会議において強く要望されているところであるが、効率化のための方法は外部委託に限るものではなく、その他の手段も含めて検討するべきである。

対物業務の効率化について、以下の内容で検討を進めていくべきである。

(1)調剤業務の一部外部委託
①現状 薬機法の規定により、現在、調剤業務の外部委託は認められていない

(中略)

本ワーキンググループでは、規制改革推進会議医療・介護・感染症対策ワーキンググループにおける議論等も参考にして、調剤業務の一部外部委託について議論を行った。

②検討の方向性
○ 本ワーキンググループにおける、調剤業務の一部外部委託の考え方及び対応方針を以下のとおりまとめた。厚生労働省はこの考え方等を踏まえ、具体的な内容について引き続き検討を進めるべきである。

〇 調剤業務の一部外部委託に係る考え方及び対応方針
①基本的な考え方
・対物業務の効率化を図り、対人業務に注力できるよう調剤業務の一部外部委託を検討する。
・外部委託を行うことにより、患者の医療安全(医薬品の安全使用)が脅かされてはならない。このため、安全を担保する仕組みが必須である。
・外部委託については、患者の医薬品アクセスに支障が出ない範囲での検討とすべきである。例えば、患者に必要な薬剤が必要なタイミングで入手できること、地域における医薬品アクセスが阻害されないことが重要である。
・仮に委託元と委託先の関係について距離制限を設けない場合は、委託先の集約化・大規模化が進むと考えられる。これに伴う影響としては、
①拠点化による影響(自然災害等に対するリスク)や②地域医療への影響(各薬局の医薬品の備蓄品目数や備蓄量が減少するおそれ、薬局が地域から淘汰される可能性など)が懸念される。
・現時点では、調剤業務の外部委託は法律で認められておらず、実施例が存在しないためにその評価が困難であり、実施する際は、その効果を検証するという観点から適切な範囲で進めるべきである。
・外部委託により、効率化が図れるかについての検討(検証)が必要である。
・このような点を踏まえ、以下の②に示す方針で調剤業務の一部外部委託の検討を進めるものとする。
②調剤業務の一部外部委託の実施要件
ⅰ)外部委託の対象となる業務
・調剤業務の一部外部委託の対象となる業務の範囲は、その必要性及び実施可能性を考慮し、当面の間、以下の範囲とすることが適当である。
ただし、委託元の薬局で最終監査を行うことが困難である散剤の一包化は対象外とする。
・一包化(直ちに必要とするものを除く。)
・外部委託が法令上実施可能となった後に、安全性、地域医療への影響、薬局のニーズ、その他地域の薬局の意見等の確認を行い、その結果を踏まえ、必要に応じて一包化以外の業務(例:高齢者施設入居者への調剤)を外部委託の対象に含めるべきか否かの検討を行う。
ⅱ)委託先
・委託先は薬局とする。
・委託先は同一法人内に限定しない。
・委託元と委託先の関係について、距離制限を設けない場合は、委託先の集約化・大規模化が進むと考えられ、これにより、
・拠点化による影響(自然災害等に対するリスク)
・地域医療への影響((ア)各薬局の医薬品の備蓄品目数や備蓄量が減少するリスク、(イ)連携が容易な同一法人内を中心に外部委託が行われ、かつ、それが集約化・大規模化により効率的である場合、地域の小規模な薬局が競争上不利になり淘汰されるリスクなど)
が懸念されるとの意見があった。
・一方で、距離制限を設けた場合には、委託先の集約化や効率化が進まないことなどの理由により、外部委託サービスを提供する者が現れず、委託を希望する薬局が外部委託できない地域が生じる懸念があるとの意見があった。
・以上のことから、一定の距離制限を設けつつ、各地域で調剤業務の一部外部委託が利用できるようにするという観点から、委託先は当面の間、同一の三次医療圏内とする。
・外部委託が法令上実施可能となった後に、安全性、地域医療への影響、外部委託の提供体制や提供実績(同一法人及び同一グループ内でない薬局への外部委託の提供体制及び提供実績を含む。)、地域の薬局の意見等の確認を行い、その結果を踏まえ、必要に応じて(ア)委託元及び委託先の薬局の遵守事項、(イ)委託元と委託先の距離について見直しを行う。
ⅲ)安全性の確保等
・委託先の受託業務プロセスにおいて患者の医療安全が確保されるよう、必要な基準を設ける必要がある。当該基準の検討においては、例えば、EUのADDガイドライン*が参考になるとの意見があった。
* Automated Dose Dispensing: Guidelines on best practice for theADD process, and care safety of patients(2017 欧州評議会)。ADD(異なる薬剤について自動化を含む手法により包装化すること)について、委託先の運営(例:法的設計、従業員教育、医薬品管理)等について考え方がまとめられている。
・当該基準の検討に当たっては、以下の点を考慮すべきである。
・委託元及び委託先が手順書の整備や教育訓練を行うこと
・適切な情報連携体制を構築、維持できること
・委託元の指示の記録や、委託先での作業が確認できる記録(例えば、画像や動画での確認、調剤機器へのアクセスログ等)を残すこと
・最終監査は委託元の薬局が実施すること。
・委託先で調製された薬剤の確認の方法としては、委託先から送付された薬剤の実物により行う場合に加え、委託先から提供された画像等により行う場合が考えられる。
・最終監査後の患者への薬剤の交付は、委託元から交付(直接の手渡し又は配送)する場合と、委託先から交付(配送)される場合が考えられる。どちらの交付方法によるかは、委託元の薬局が患者の医療安全が確保される措置を講じた上で適切に判断する。
・厚生労働省及び自治体には、委託先の薬局に対して、通常の薬局業務に対する監視指導の権限に加え、外部委託についても監視指導する権限が必要である。
・外部委託後に処方内容又は調剤内容について変更が生じることがないよう、委託元の薬局による処方内容の確認等のための患者への聞き取りは、調剤設計の段階で適切かつ確実に行うことが重要である。
ⅳ)その他
・委託先及び委託元における薬機法及び薬剤師法上の義務や責任について整理し、必要な見直しを行う。
・外部委託を利用する場合には、患者に十分説明して同意を得た上で実施しなければならない。
・薬局開設者は薬剤師の意見を尊重し、外部委託を強要してはならない。
・服薬指導については、調剤設計の段階で行う場合や薬剤の交付時に行う場合が想定される。

○ その他、本対応方針を検討する中で以下のような意見があった。
・病院では、チーム医療の中で薬物療法の最適化のために、新たな処方箋の発行を伴わない医薬品の減量・増量・休薬・中止がある。このため、一連の薬物療法を一体で行う方が効率的であり、外部委託は適当ではない。
・外部委託の具体的な手順を想定し、医薬品の所有権の所在、調剤した薬剤の被包等への表示、終了時点(調剤済み印)等について整理する必要がある。

対象範囲を一包化に限定することに関しては、委員から異論も示された。

佐々木 淳氏(医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長)は、一包化が処方箋に占める比率が少ないために、実際に効率化が限定され取り組む薬局が少なくなる懸念を示し、一包化の指示が含まれている処方箋の調剤に関しても外部委託を認めてはどうかとの提案をした。

印南 一路氏(慶應義塾大学総合政策学部 教授)も、対象業務を限定することで、今後の検証においてニーズは把握できなくなることへの懸念を示した。

ただ、薬局・薬剤師関連の委員からはまずは一包化からの開始を支持する声が相次いだ。

孫 尚孝氏(ファーマシィ医療連携部 部長)は、「散剤や水剤を目の届かないところで混ぜられてしまうと、確認のしようがない。今回の議論の根底にある安全を担保できないような調剤に関してOKにするということは非常に違和感を感じる」と述べた。

藤井 江美氏(日本保険薬局協会 常務理事)も、「外部委託に関してはゼロか100でなく、まずは業務負担の重い一包化をということでまずはいいのかなと。その上で、実際の情報のやりとりの仕方などを検証することが必要。利便性が高まるとはいえ、一包化以外も解禁というのは
完全に大丈夫かという疑問が出る。まずは薬剤師が安心して始められるようにステップは踏んでいただきたい」とした。

橋場 元氏(日本薬剤師会 常務理事)も、今回の議論の中で一包化の安全性について議論がされてきた経緯や薬局薬剤師から一包化以外の外部委託に関して慎重な意見があることを尊重する必要もあるとの趣旨を語り、一包化以外については「明確に反対」とした。

さまざまな議論を経た上で、今回は一包化を対象にすることで合意した上で、今後、法改正を含めて外部委託が可能になった上で、継続的な検証を行う方針になった。

印南氏は、一包化を含めた高齢者施設の処方箋調剤の外部委託も検討してはどうかとの提案があったことの記載を求めた。

出井京子氏(NTTドコモビジネスクリエーション部ヘルスケアビジネス推進室 室長)は「必要に応じて検証」との書きぶりを一歩、前向きにすることを求めた。「ぜひ前向きにどんどん進めていくことを後押しする表現にしていただけないか。逆に優位性も含めて確認をしていただきポジティブにいっそう進めて、効果について確認できた場合についても検討するという言葉にしていただきたい」と述べた。

なお、橋場氏は事務局案に関して、「さまざまな主張はしたが、その上で事務局が提案していると理解した。事務局案を受け止めたい」と述べた。

今後、さらにとりまとめ案の細かな文言修正を加えて、「とりまとめ」を公表する。

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