核兵器禁止条約の 締約国会議 「日本政府の参加を」外務省に“直談判” ウィーンで動く若者たち

オーストリアのウィーンで開かれている核兵器禁止条約の締約国会議。

日本政府を動かそうと被爆地出身の若者たちが現地で活動を続けています。

時には外務省職員に詰め寄る場面も…そんな彼らの動きに密着しました。

慶応大学4年 高橋悠太さん「オブザーバー参加を日本にしてほしいという署名を集めてこの3日間で2万1065も集まりました。これについてはどう受け止めますか」

ウィーンで行われた絵にかいたような「直談判」。

福山市出身で現在は東京の大学に通う高橋悠太さん。

締約国会議4日前からオンラインで集めた署名は2万を超えました。

高橋悠太さん「納得しようがないですよね。いい加減にしてほしいですよねそろそろね。だってオブザーバー参加ですよ。オブザーバー参加すらできないんですよ。それは橋渡しという意味ないですよ」

高校時代に広島で平和活動をしていた高橋さんは去年、大学生を中心に核廃絶を考える団体を立ち上げました。

出国直前に届いたのは「日本が締約国会議に不参加」という報道でした。

高橋悠太さん「オブザーバー不参加の報道もちょっと外務報道官もメディアも首相より先に出したら、首相の責任追及もしにくいじゃん。難しいところだな」

15日外務省は「核保有国が参加していない」としてオブザーバー参加を見送る方針を表明。

この後の会見で岸田総理は「同盟国アメリカとの信頼関係のもとに現実的な核軍縮から始めていく」と理由を説明しました。

高橋さんはウィーンでも被爆者と現地の人が交流する場をつくるなど、被爆の実相を伝えるための活動を行いました。

一方で世界の国々は動きを見せます。

高橋悠太さん「ちょうど今から3時間くらい前に出たんですけど、オーストラリアが締約国会議にオブザーバーで参加すると。ついにここまで来たかと(締約国会議会議まで)まだあと3日ありますからそこまでに世界各国は足並みを一歩前に進めようと努力しているわけですよ。ギリギリのところでハッキリ言ってしまったら日本はさじを投げてしまっている1週間前に」

オーストラリアやNATO=北大西洋条約機構に加盟するオランダやベルギーなどが相次いでオブザーバーとして会議への参加を決めました。

山口和政記者「締約国会議を翌日に控え、日本政府も参加する国際会議が始まりました」

日本は締約国会議の前日(20日)に行われた「核兵器の非人道性を議論する会議」には代表団を派遣しました。

帰国する外務省の職員に対し高橋さんは直接訴えることにします。

高橋悠太さん「21日の締約国会議開始までの4日間で日本政府にオブザーバー参加を求める緊急署名を始めた。この会議終了後の6時ぐらいに見せに行ってみる」

そして…

高橋悠太さん「石井課長ちょっと一瞬よろしいですか」

外務省 石井良実軍縮課長「いや15分後くらいからまたあとで」

高橋悠太さん「いや重要な知らせが30秒ほどありまして、最後までオブザーバー参加を日本にしてほしいという署名を集めてこの3日間で急きょですけど2万1065も集まりました。これについてはどう受け止めますか」

外務省 石井良実軍縮課長「核兵器禁止条約は核兵器のない世界の出口になる条約だと思っています。日本政府の立場そこは変わりません。。総理も国会で申し上げているように核保有国の協力がないと核兵器は減らせない。現在核兵器禁止条約には核保有が一国も参加していないということがあるので、そういうことから先日も総理がそういうことよりも核保有国が核軍縮に関与するように努力する必要がある」

高橋悠太さん「核保有国を関与させる努力の中にオブザーバー参加は含まれないんですか」

外務省 石井良実軍縮課長「それはどういう意味ですか」

高橋悠太さん「保有国に働きかけることが重要だと言いましたが、そのためにオブザーバー参加することはできないですか」

外務省 石井良実軍縮課長「核保有国が1国も参加していない状態でオブザーバー参加すること、何か論理的ではない気がする」

高橋さんの思いは届きませんでした。

慶応大学4年高橋悠太さん「重要なことは保有国うんぬんはなくて、日本が意思決定するかどうかなんじゃないですかね。環境が整ってからオブザーバー参加しても橋渡しをやっている意味はないわけです。日本が被爆国としてやるべきことはそこじゃなく、環境が整うことを自ら率先してリスクを負いながらやることだと私は思う」

外務省 石井良実軍縮課長「どうやったら核保有国の関与を得られるか動かしていけるかと総理も言っているが、そこを何とかしないといけないという思いでやっているので、先ほど画面を見せられた時はきちんとした思いでやっていかないといけないとあらためて思いました」

締約国会議にはドイツやベルギーなどアメリカと核共有する国もオブザーバー参加しました。

核廃絶へ向けた議論は唯一の戦争被爆国日本がいないなか進んでいます。

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