【参院選2022×「Z世代」】若者遠ざかる政治 20代国会議員や政治家志望学生の思い

国会唯一の20代議員、馬場さん。昨秋の衆院選当選から8か月、議員事務所の書棚はまだ空っぽで「たくさん活動して埋めていきたい」

 神奈川では過去最多の22人が舌戦を繰り広げる参院選。30歳以上が立候補できるが、全国で30代の候補者は75人で、候補者全体の約14%にとどまる。25歳から立候補できる衆院でも、20代議員は全国で福島県の馬場雄基さん(29)=立民、比例東北=の1人しかいない。Z世代を政治から遠ざける一因と言える。

 若者と政治がなぜ遠いのか─。「多様な社会の声を届けるためにも、若い政治家はもっと必要」という馬場さんを訪ねた。

◆校則に疑問 高校時代の“政治”

 若い政治家も少なければ、若い世代の投票率も低い。そんな現状にも馬場さんは「多くの若者が社会に対して危機感を持っている」と強調した。「それが政治参加に結びつかないのは、一歩踏み出して社会を変える、成功体験を積む環境がないだけなんですよ」。自身の歩みから、そう感じるという。

 東日本大震災の1カ月後、地元福島から慶応大学に進学。卒業後は銀行に就職した。休日のボランティアで島根を訪れた際、福島から移ってきた小学生と出会ったことが転機となった。「復興に向け、いま自分ができることをしたい」。故郷に戻り、現場で実践している中で政界に誘われた。

 身近に政治家はいない。大学時代、政治家になろうとは少しも考えていなかった。ただ振り返ると、高校時代に“政治に参加”していた。

 携帯電話の「校内持ち込み禁止」に疑問を感じ、生徒会長として変えようと取り組んだ。「情報リテラシーを守るために持ち込んではいけないという理由だったが、守るのなら携帯を持ってそれを使わないとするべき。そう思って動き、持ち込みOKにさせた。これって政治じゃないですか」

 まっすぐに語る馬場さん─。ただ、その政治に距離を感じる若者は多い。

◆「政治キャラ」 拒絶変えたい

 政治家志望の大学2年生テンキ(19)=秦野市=も、共通する感覚を持っている。

 高校時代、“ブラック校則”を変えようと生徒会長に立候補した。「男子の髪型でツーブロックはだめ、寒くても防寒着を着てはだめなど、学校独自のルールに不満があった」。新型コロナウイルス禍の休校もあり、自身で成果は残せなかったが、後輩に思いを託した。

 最も関心のあるテーマは教育だ。将来は地方議員を経て国会議員を目指しているが、同世代と政治の話はしていない。「周囲に政治の話をしようとすると拒絶される。これを変えたい」

 昨年の衆院選でも友人らに投票を呼びかけたが軽く流され、煙たがられた。それでもめげずに選挙の話を続け、「政治キャラとして定着してきた」と苦笑い。確認はしていないが、何人かは投票に行ってくれたと信じている。

◆普段から機会あれば―

 高校生は、政治との距離をどう感じているのか。

 私立高校2年のユタカ(17)=大井町=は、ウクライナ問題など話題のニュースを議論する社会科学部に所属する。だが、そうした話題は「興味ないだろうし、引かれそう」で部活の外では話さない。

 社会問題への関心は高いが、政治家の仕事はよく分からない。「選挙の時だけ活動するんじゃなくて、普段から接する機会があればいいのに。そもそも政治家って子どもに向かって話ができるんですかね」

 20代唯一の国会議員である馬場さんは、若者との対話企画や交流サイト(SNS)でのやりとりを通し、そんな空気を変えようと実践している。「お兄さんお姉さんのような距離感で、自由に安心して話し合える環境が必要。世代の近さを生かし、身近な政治家になりたい」

 ただ、それができる立場にいる若手議員そのものが圧倒的に少ないのだ。

© 株式会社神奈川新聞社