福田富一(ふくだとみかず)知事は28日の定例記者会見で、2021年度の県産農産物輸出額が前年度比72%増の5億3398万円に上り、統計が残る11年度以降で過去最高を更新したと発表した。新型コロナウイルス禍からの経済回復による外食需要の増大で、主力の牛肉が2.7倍の3億1815万円と大きく伸びた。ナシやイチゴも好調に推移した。
これまでの輸出額の最高は18年度の3億6900万円だった。
県農政部によると、輸出額の約6割を占めたのが牛肉で、主な輸出国は米国、シンガポール、欧州連合(EU)。芳賀町にある食肉加工処理施設「とちぎ食肉センター」からEUに本格的な輸出が始まるなど、販路も拡大したという。
ナシも約3.5倍の3014万円と大きく増えた。天候の影響が少なく、出荷規格も広げたため輸出向けの供給量が増加した。東南アジアの現地のスーパーなどで展開したプロモーション活動も好評だったという。
イチゴは1.9倍の1904万円。新品種「とちあいか」の輸出が開始された上、コロナ禍からの経済回復に伴い航空便数が増えたことも追い風となった。サツキなどの花きも好調で、18%増の8829万円となった。トマトやチーズなどの試験的な輸出も行われた。
一方、20年度に過去最高を更新したコメは、28%減の7184万円だった。日本食人気により米国や香港などで引き続き需要が高かったが、他県が輸出向けの生産を拡大したことで、相対的に本県産米の輸出が伸び悩む形となった。
県は25年度の目標輸出額として10億円を掲げる。今後は、東京電力福島第1原発事故に伴う輸入規制が2月に緩和された台湾や、所得水準の高いEUでの販路拡大などを図る考え。
福田知事は「産地支援や輸出国の状況に応じた戦略的販路拡大などをオール栃木で進める」と話した。