初めての核禁条約締約国会議のポイントは 現地取材の小林キャスターが報告

6月21日から3日間、オーストリアのウィーンで開催された核兵器禁止条約の初めてとなる締約国会議。現地で取材した小林康秀キャスターが報告します。

核兵器禁止条約の初めての締約国会議では、核保有国が批准した際、核兵器の廃棄の期限を10年と決めました。

RCC

このほか、外交努力で批准国を増やすこと、核被害者の救済を強化することなど条約の運用をまとめた「行動計画」、核兵器のない世界の実現へ決意を記した「政治宣言」を採択し、閉幕しました。

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RCC

小林康秀キャスター
締約国会議どのようなものだったのか、ポイントは3つです。
▽ 対立ではなく補完関係に
▽ 参加しなかった日本 参加したドイツなど核の傘の下の国
▽ 世界メディアの関心は…

まず1つ目、対立ではなく補完関係に。この条約の一番の大きな問題は「核保有国」をどうやって引き入れるかです。

核兵器禁止条約(TPNW)は、非核保有国が中心となっていて、核保有国は1国も入っていません。核保有国も参加しているのはNPT(核拡散防止条約)。核をこれ以上、広げないようにしますよ、という条約には、核保有国が参加していて、ここで対立している状況が続いていて、ここがどうなっていくのか心配していました。

RCC

締約国会議で採択された「行動計画」には、核兵器禁止条約はNPTを補完するものであり、連携していくことを強調しています。つまり、お互いを補うものだということです。歩み寄って行こうということが今回、決められました。

被爆国・日本は不参加も… 同じ核の傘にあるNATO加盟国などは「建設的な議論をしていきたい」と発言

ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の川崎哲さんは、今回の締約国会議をこう総括していました。

RCC

ICAN 国際運営委員 川崎哲さん
「核兵器禁止から廃絶に向かう仕事が始まった日であり、高揚感を今、感じています。日本政府の不在というのは、非常に恥ずかしい状況でありまして。オブザーバー参加した核の傘の下にある国だけを数えても5か国いたわけですよね。(この国々は)今すぐ核兵器禁止条約に入らなくても、既存のNPT体制と補完関係にあるんだということを強調しながら議論を深めることが重要だと発言した。締約国会議の場で議論を深めることが、8月のNPT再検討会議にもプラスになるんだという姿勢をオブザーバーの国々は示してくれた。それこそ、岸田首相が言ってきた『核兵器国を巻き込む』や『橋渡しをする』そのものじゃないか

青山高治キャスター
唯一の被爆国・日本としては、条約に参加していない訳ですが、せめてオブザーバーで参加してはどうかという声も多く聞かれた。同じ核の傘にある国もオブザーバー参加はしていたわけですよね。

RCC

小林キャスター
NATO(北大西洋条約機構)加盟国のドイツ・ノルウェーはいち早く参加を表明をしていました。直前になって、オランダ・ベルギー、そして、アメリカと同盟関係にあるオーストラリアも手を上げました。発表がギリギリになった理由は、それぞれあるようですが、関係筋によると、早めに言うと、横やりが入って参加しにくくなるから…という声もありました。

河村綾奈キャスター
横やりというのは、核保有国から…ということでしょうか

小林キャスター
おそらくそうだと。厳しい現実だと思います。

実際に参加した各国は、核兵器禁止条約には「参加しない」と明言するものの、「建設的な対話を進めていきたい」という発言をしています。

RCC

立場は違うが、核軍縮のための模索はしていきたいというもので、日本がやろうとしている「橋渡し」を各国がやっているのではないか。なぜ、日本はできないんだろうと思いました。

日本政府は、いろいろなところで慎重になっているとは思います。8月にはNPT再検討会議があり、日本の総理大臣として初めて岸田総理が参加しますが、その滞在期間、開催期間中に日本がどういう役割を果たすか見ていきたいですね。

「核兵器禁止条約の存在すらあまり知られていない」海外メディアの関心は低く

RCC

青山キャスター
この締約国会議ですが、日本では連日、報じられていましたが、他の国ではどうだったのでしょうか

小林キャスター
現地オーストリアのテレビでは、初日と最終日に少し触れられていました。会議には、海外メディアもいましたが、ほとんどは日本メディアでした。

ドイツの記者に聞いたところ、「ドイツではほとんど報じられておらず、核兵器禁止条約の存在すらあまり知られていない」と話をしていました。

河村キャスター
現地からの報告でも日本のメディアが目立つというのもありました。それだけ、世界の関心は低いということですね。

小林キャスター
これはもしかすると、核兵器国が参加していないからではないかという声もありました。アメリカやイギリスなどの大手メディアがあるが、そういったところも参加していないということも影響があるようです。

RCC

ただ、次の締約国会議は、来年(2023年)11月27日から12月1日にかけて、アメリカ・ニューヨークの国連本部で開かれます。地元アメリカメディアが、どれくらい来るのか気になるところです。また、それまでにどれだけ核保有国との距離がどれぐらい縮まるのか。日本の果たすべき役割、そういったところも注目されます。

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