18歳選挙権が若者の投票に及ぼした影響は? (原口和徳)

6月22日公示、7月10日投開票の日程で参議院議員選挙が行われています。

18歳選挙権が導入されてから5回目の国政選挙となりますが、18歳選挙権の導入により、若い世代の意見を国や地方の政治にもっと反映できるようになってきたのでしょうか。

総務省「年齢別投票率調」を用いて過去の国政選挙から検討してみましょう。

10代の有権者は20代よりも投票している

図表1にある通り、10代有権者の投票率は総じて20代有権者よりも高い水準にあります。

図表1_若年層の国政選挙での投票率の推移

特に初めて10代の有権者が選挙権を得た参院選(2016年)では高い投票率となっていました。

また、20代有権者に着目してみると、総じて衆院選の投票率は参院選よりも高くなっていますが、若者の投票動向が注目を集めた参院選(2016年)では前後の衆院選よりも投票率が高くなっているように、18歳選挙権導入のインパクトは少し上の世代にも及んでいました。

「かつての10代有権者」も20代有権者になると投票率が低下

ただし、18歳選挙権には、「2回目の投票での棄権」という課題が生まれています。

図表2_年代別投票率の推移

参院選(2016年)での10代有権者の推定投票者数は約110万人ですが、3年後の参院選での21歳有権者と22歳有権者の推定投票者数は67万人と約40%減少しています。

同様に衆院選(2017年)での10代有権者の推定投票者数99万人は、4年後の衆院選では22歳有権者と23歳有権者の合計80万人と約20%減少しています。

高校での学校生活が投票参加に影響

参院選(2016年)は初めて18歳選挙権が導入された選挙という特殊性があるため、衆院選を対象にもう少し詳しく見てみましょう。

2017年衆院選での18歳有権者と19歳、20歳有権者を比較してみると、18歳有権者(2017年衆院選)は4年後に推定投票者数が減少するものの、19歳有権者(2017年衆院選)と20歳有権者(2017年衆院選)では4年後の推定投票者数が増加しています。

4年後に推定投票者数が増加する傾向は、21歳(2017年衆院選)や22歳(2017年衆院選)でも見られますので、これらの年代では加齢に伴う投票率の増加がみられることが確認できます。

一方で、18歳有権者(2017年衆院選)について、4年後に投票率が増加したのは東京都(4.6%増加)と愛知県(0.4%増加)だけとなっています。

同じ18歳有権者でも、高校に在学中の人のほうがすでに卒業している人よりも投票率が高くなるとの報告もあるように、学校生活が与える影響が大きいことが推定される状況です。

18歳有権者としての最初の投票を行った人が2回目以降の投票に臨むようにするためには進学先や就職先、地域などの様々な場面で高校での様々な活動が行っているように、継続して投票を働きかけていく必要がありそうです。

年配者に比べて投票しない若者は他国よりも多い状況

図表3にあるように、18歳選挙権に関わらず、日本の若年層の投票率の落ち込み(65歳~74歳の投票率を基準とした比較結果)は他国よりも際立ったものとなっています。日本(衆院選。2021年)では18歳~24歳の投票率は65歳~74歳に比べて約35%低下していますが、次に低下幅が大きいアメリカやイギリスでは25%程となっています。

図表3_高齢者の投票率と他の年代の投票率の比較

ただし、直近の衆院選(2021年)では、18歳~24歳において約5%の改善もみられています。18歳有権者(2017年)の一定数が4年後に投票を棄権していますが、最初に高い投票率を記録することで、減少後の投票率がそれまでよりも高い水準になったことや、初めての投票を迎える21歳以下の世代の投票率が改善傾向にあることなどが背景にあります。

ここまで見てきたように、18歳選挙権の実現によって10代有権者がそれまでの若い世代よりも高い投票率を示すなど、若者の投票参加は少しずつ進んでいます。一方で、他国と比較してみると、まだまだ低い水準にあることも事実です。

若い世代の投票参加は今後も改善が進み、他国並みの水準へと近づいていくのか、それとも一度足踏みをすることになるのか、参議院議員選挙での動向が注目されます。

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