有権者は選挙関連運動をテレビで見るのか、ネットで見るのか? その割合は?(データアナリスト 渡邉秀成)

インターネットを活用した選挙運動が解禁されたのが2013年の第23回参議院選挙でした。

それから10年近い時間が経過し、政党、立候補者がインターネットを活用した選挙運動を行うことは当然のこととなりました。

動画、SNS、ブログ等の投稿方法についても、さまざまな方法が模索され続けています。

そして、有権者がどの政党に投票するのか、どの候補者に投票するのかを検討する際にも手元にあるスマートフォン等で調べることが増えてきました。

そこで今回は有権者が

1:有権者はどのような媒体で選挙情報を目にしているのか、

2:それらの情報は役立ったのか、

3:どのようなタイミングで選挙情報を閲覧していると推測されるのか

について、公益財団法人明るい選挙推進協会の調査結果をもとに観察してみたいと思います。

1:有権者はどのような媒体で選挙情報を目にしているのか

まず最初に

1:有権者はどのような媒体で選挙情報を目にしているのか

について見てみます。

図1 選挙運動への接触度と有用度(複数回答)

図1のグラフを見ると、掲示場にはられた候補者のポスターを見たという割合が最も多いことがわかります。

続いて、テレビから放映された候補者、政党の政見放送と続きます。

選挙公報も多く見られていることがわかります。

インターネットが普及してきたとはいえ、テレビから放送される情報を目にする人の割合が多いことがわかります。

立候補者が「さまざまな年齢層に意見を聞きながらどのポスターにするのか選択している」というのも、この調査結果を見ると合理的であることがわかります。

投票を呼びかける広告をテレビで見た人が多い

また、投票を呼びかける広告をどこで目にしたのかについての調査結果が図2です。

図2 投票参加促進広告への媒体別接触率

こちらでもTVスポット広告、新聞広告と続いており、マス・メディアと呼ばれる媒体から流れてくる情報を目にする人の割合が多いことがわかります。

近年、インターネットに接続する時間が長くなる傾向にありますが、選挙情報、投票を呼びかける広報等の情報に接する媒体としては、従来から存在するテレビ、新聞、選挙公報等が多いようです。

ただ、年代別に観察していくと、年代別に特徴があることがわかります。

年代別の特徴:若年層はインターネットが多い

図3_年代別_投票参加促進広告への媒体別接触率

全体的に見ると従来からのマス・メディアから選挙関連情報を得ることが多いことが観察できますが、若年有権者層はインターネットから情報を得ている人の割合が多いということは言えそうです。

2:それらの情報は役立ったのか

次にそれら各種メディアから得られた選挙関連の情報がどの程度役立ったのかについて見ていきます。図4はどの媒体からの情報が役立ったのかを年代別に示したものです。

図4_有用度_役だったかどうか

役立った選挙運動情報として、テレビでの政見放送、選挙公報、党首討論会が上位にあげられています。

テレビで放映される政見放送は役立つと回答する人の割合が多いようです。

また、政党の動画広告が役立ったと回答する人の割合はあまりいないようです。

3:どのようなタイミングで選挙情報を閲覧していると推測されるのか

最後に、有権者はどのようなタイミングで選挙情報を閲覧しているのかについて推測してみます。

最初に多くの人が利用していると思われるGoogleでの検索動向について見ていきます。

検索件数の調査期間は参議院選挙では公示から投票日、衆議院選挙では解散日から投票日で設定をしました。

第24回参院選(公示日:2016-06-22  投票日:2016-07-10)

第25回参院選(公示日:2019-07-04  投票日:2019-07-21)

第48回衆院選(解散日:2017-09-28 告示日:2017-10-10  投票日:2017-10-22)

第49回衆院選(解散日:2021-10-14 告示日:2021-10-19  投票日:2021-10-31)

GoogleTrendsで見ると、投票日間近から投票日に人気度が急上昇していることが確認できます。

そして選挙情報を検索するとWikiPediaが検索結果の上位に表示される人が多いと思われますので、Wikipediaでも同様に各選挙ページの閲覧数の変化についてみてみます。

図5が参議院、図6が衆議院を示しています。

図5 参議院
図6 衆議院

衆議院選挙では解散が宣言された際に一旦閲覧数が上がり、公示日に再び閲覧数が上昇し、選挙前日、当日に閲覧数が急上昇しています。

Wikipediaの閲覧数だけを見ると、選挙公示、投票日前日当日に多くの人が選挙情報に接していることがわかります。

テレビ等選挙報道を見ながら検索をしていたり、投票前に何らかの検索をしているものと思われます。

国民のインターネット利用時間は長くなる傾向にありますが、選挙運動に関する情報を得る媒体としては、現在のところはテレビ等から情報を得ている人が多いようです。

今回は有権者が選挙情報を得る媒体、インターネットの閲覧タイミングについて観察してきました。

追記:

公益財団法人明るい選挙推進協会からは国政選挙、統一地方選挙後に意識調査結果が公表されます。

これらの意識調査報告書はPDF形式で公表されています。

この報告書内に掲載されている表、データ等は各省庁が発表する白書と同様にCSV形式で公表することはできないものでしょうか。

そして過去の意識調査結果も電子データが残っているのであれば機械処理可能な形式での公開、電子データが残っていないものであれば紙データをスキャンしPDFに変換したもので公開されることを希望します。

© 選挙ドットコム株式会社