投票率伸び悩む日本の若い世代、海外の若者の政治と選挙への関心は? 福井県に住む米国人、韓国人に聞いてみた

「誰もが政治的な信念を持ち、表現するのが米国」と話すウィンバーンさん=福井県福井市の福井県国際交流会館
「韓国では政治や選挙は生活に直接つながっていると考えられている」と話すクォンさん=福井県福井市の福井大学文京キャンパス

 7月10日投開票の参院選は、選挙権年齢が18歳に引き下げられてから5度目の国政選挙となる。若い世代の投票率が伸び悩む日本の現状を、どう見ているのか。米国出身で福井県国際交流員のゾーイ・ウィンバーンさん(27)と、韓国から福井大学に留学中の權起允(クォン・ギヨン)さん(27)に聞いた。

母国がどう変わるのか変わらないのか、目が離せない

 アメリカでは高校生が普通にプラカードを持って政治デモに行きます。私はクラスメートと一緒に市役所の前で「環境を守れ」って訴えた。最近では「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大事だ)」が大きな運動になっています。

 アメリカは人種の問題とか、銃規制とか、健康保険制度をどうするかとか、社会の基本的な政策課題をいくつも抱えています。道徳心とかアイデンティティーと同じように、政治的な意見は持っていて当たり前。日本の若い人は政治的意見をあまり表に出さないですね。

 私は人種差別が許せない。高校時代、すごく仲の良いイスラム教徒の女性がいました。彼女はヒジャブ(頭に巻くスカーフ)姿に対し、嫌な言葉を何度もぶつけられたといいます。「9.11」(2001年の米中枢同時テロ)の後、差別が増えたと感じます。

 ニューヨークなど都市部ではホームレスがたくさんいるのを知っていますか。東京と比べものにならないほど家賃が高い上に、保険制度が整っていないことも原因です。高額な治療費の借金を返せずに転落する人がいます。誰でも突然ピンチになる可能性がある。だから危機感が強いし、政治に関心を持ちます。

 アメリカは州ごとに支持政党が固まっていることもあり、大統領選でもそれほど投票率は高くない。ただ、バイデン氏とトランプ氏が争った2020年の選挙は、7割近い投票率があった。母国がどう変わるか、変わらないのか。日本との関係も含め、政治から目が離せません。

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選挙結果で暮らしが変わる、政治と選挙は生活とつながっている

 韓国は政権交代がよくある。公約を守らないと、批判されて次の選挙で負けます。だから政党は公約実現に努力する。韓国人は、政治や選挙は生活と直接つながっていて、どの政党が勝つかで暮らしが変わると考えています。

 韓国には兵役の義務があります。大学1年の19歳のとき、海軍に入りました。23カ月の訓練は厳しく、平和の大切さを思い知った。戦争は起きてはいけない。軍事政策に関心を持つきっかけになりました。

 韓国の若者は、お酒を飲みながら政治の話をします。高校生もよく話しますね。大統領選が近づくと国全体が盛り上がる。尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が当選した今年3月の大統領選前は、私の大学に与野党の関係者がやってきて、学生と意見を交わした。大学主催の学生討論会もありました。

 デモといえば、朴槿恵(パク・クネ)元大統領の退陣を求める運動を思い出します。私もソウルまで行って参加しましたからね。ものすごい数の若者が集まっていました。

 「KOSPI」(ソウルの総合株価指数)って分かりますか。日経平均株価のようなものです。韓国では高校生も数値を気にして、株や仮想通貨に投資する人が少なくありません。

 就職率が悪く、経済も厳しいので、多くの若者が経済を学び、資産を運用する。100の資産があったとします。韓国人は200に増やそうとし、日本人は何とか99か98をキープしようとする。日本人と接し、考え方の違いに驚きました。

 韓国では大学入試でも就職試験でも、政治や経済について必ず聞かれます。政治を知らないと合格できないから勉強する。そういう意味でも、生活と切り離せないのです。

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