野菜や人間「腐敗」テーマの油絵 真庭出身の画家、地元で個展

「腐敗」をテーマにした油絵と制作した池田さん

 腐っていく野菜や果実、人間―。「腐敗」をテーマにした油絵を手掛ける真庭市美甘地域出身の画家・池田愛花里(あかり)さん(25)=埼玉県所沢市=の個展が真庭市内で開かれている。モチーフの持つ“不快さ”とは裏腹に、緻密に描き込まれた作品は見る人をくぎ付けにする“美しさ”を秘めている。

 腐ったキャベツにタコの足が絡み合う「人類を滅ぼして」、サクランボから白子のような空想上の生命体が生まれる「腐った愛」、うなだれた青年が海の中で溶けていくさまを描いた「明日をけなす」など、ここ1年で制作した11点が並ぶ。

 「腐ったものを美しく表現する方法を追求してきた」と、独自に調合した光沢のある絵の具を使い、暖色をバランス良く配置することで画面に輝きと温かみをもたらしている。

 池田さんは勝山高を卒業後、富山大芸術文化学部、同大大学院に進んで油絵を専攻。大学3年生の時、段ボール箱に詰められたリンゴの山の中に腐った一つを見て「集団に溶け込めずに苦しんでいた自分と重なって親近感が湧いた」と、今のテーマにのめり込んだ。

 富山県ゆかりの芸術家による作品展「美の祭典 越中アートフェスタ」(2017年、同県など主催)で最高賞の大賞、全国公募展「第96回国展」(22年、国画会主催)では平面作品の準会員(125人)から1人だけ選ばれる「SOMPO美術館賞」に輝いた経歴を持つ。

 現在はアルバイトをしながら創作を続け、関東や北陸などで作品展示会を開いている。

 池田さんは「腐ったものは、見た目や臭いで嫌われるが、カビやキノコといった新たな命を生む“美しさ”を持ち合わせている。作品が悩んだり苦しんだりしている人の視点をずらし、つらさを和らげるきっかけになればうれしい」と話す。

 会場は、三田のカフェ&ギャラリーてぁ。27日まで。木曜定休。問い合わせは、てぁ(0867―44―5558)。

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