「表に出ること自体珍しい」マリア観音像2体、資料館に寄託 長崎の潜伏キリシタン子孫

寄託された2体のマリア観音像=長崎市下黒崎町、外海潜伏キリシタン文化資料館

 長崎市樫山町の潜伏キリシタンの子孫「下村家」にあった2体の「マリア観音像」が4月、同市下黒崎町の「外海潜伏キリシタン文化資料館」に寄託された。松川隆治館長は「表に出てくること自体珍しく、資料として大変貴重」と話す。現在同館で展示している。
 マリア観音像は禁教期、潜伏キリシタンが信仰を隠すために、観音を聖母マリアに見立てて拝んだとされる。禁教令が解かれた後も下村家では代々、かくれキリシタンとしてひそかに祈りに使われてきたという。
 下村家は十数年前から空き家で、屋根の一部がはがれるなど傷みがひどかった。家の所有者だった下村マツさんの娘、弥永八重子さん(79)は幼い頃にマリア観音像を囲んで祈る親族の姿を見ていたが、就職のため10代で家を離れてから目にする機会がなくなり、「(像は)家の中にあるとは思っていたが、どうなっているかと心配していた」。
 2体の像は4月に家を解体する際、タンスの中に木箱に入った状態で見つかったという。共に白磁製で全長約23.5センチ。松川館長によると、17世紀の中国製とみられる。「バスチャン暦」と呼ばれる信徒行事を記した教会暦や、オラショ(祈り)本なども一緒に見つかった。弥永さんは「父方がかくれキリシタンだったが、早くに亡くなり、その後は母が管理していた。自分で管理するのは難しく、保管してもらえると決まり、今はほっとしている」と話す。
 マリア観音像は今後、県が文化庁と進める信仰用具の調査事業(2019~23年度)の中で、有識者らでつくる調査委員会により価値付けなどがされるという。


© 株式会社長崎新聞社