心臓移植で渡米 森きかちゃんが退院 家族との生活再開「幸せ」

退院後、笑顔を見せる森木花ちゃん(賢吾さん提供)

 重い心臓病の治療のため米国で5月下旬に心臓移植手術を受けた森木花(きか)ちゃん(4)=神奈川県葉山町=が1日、ニューヨーク市のコロンビア大学病院を退院した。1歳4カ月で発症して以来約3年間続いた入院生活に別れを告げ、両親、兄との家族4人の生活を再開。長崎県南島原市西有家町出身の父賢吾さん(42)は「子どもたちの笑顔を同時に見られるなんて幸せです」と喜びをかみしめた。
 家族にとって特別な1日だった。大好きな兄と手をつないで病棟を後にする木花ちゃんを、多くの医療スタッフが笑顔と涙で見送ってくれた。昨年11月に東京の病院から転院し約8カ月。心臓の機能が低下する難病「拡張型心筋症」と闘ってきた小さな女の子の新たな出発を、誰もが喜んでくれた。病院近くの仮住まいに着くと、木花ちゃんは「おうちに帰れたね」と、にこにこしていたという。
 実は移植手術後も深刻な状況が続いた。心臓がすぐには動き始めず、開胸したまま1週間は人工心肺装置ECMO(エクモ)の力を借りた。心臓に血栓ができて緊急手術も必要となり、賢吾さんは「祈るしかなかった」と振り返る。

看護師らに見送られ、兄と手をつないで退院する木花ちゃん=米ニューヨーク、コロンビア大学病院(賢吾さん提供)

 木花ちゃんはその苦境を強い生命力で乗り越えた。心臓は徐々に活性化。6月5日に呼吸器が外れ、意識を取り戻す時間も増えた。兄が病院に来ると、目を輝かせて起き上がり手をつないで歩いた。つらいリハビリも頑張った。同25日には集中治療室(ICU)から一般病棟に移った。
 両親の友人らでつくる「きかちゃんを救う会」が高額な医療費などを賄う募金活動を始めたのは昨年6月28日。南島原市でも賢吾さんの同級生らが街頭に立ち、支援を呼びかけた。両親は、救う会のホームページで、臓器提供者(ドナー)とその家族、医療スタッフ、多くの支援者への深い感謝をつづり、「これからは(日本の)おうちへ帰り、日常生活を送るという最終目標へ向けて準備します」と決意を語っている。
 たくさんの愛情と希望に包まれた木花ちゃんは帰国を目指して今後、拒絶反応などに注意しながら週2回の通院治療を続ける。


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