4人家族「資産2850万円のうち現金は230万円」今ある現金以外は投信積立にしてよい?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、39歳、会社員の女性。同い年の会社員の夫と、6歳と9歳の子どもと暮らす相談者。現在、資産の大部分を投資資産が占めていますが、どれくらいを現金でもっておけばいいのかわからず、アドバイスが欲しいといいます。FPの秋山芳生氏がお答えします。


ともに39歳の共働き夫婦。子どもは9歳と6歳です。

現在の資産は2,850万円で、現金比率は8%で230万円です。どれくらいを現金資産として貯めておく必要があるのかがわからずにおります。何も使う予定がないのであれば、また、リスクを承知しているのであれば、このまま今ある現金以外は全て投信積立にして問題ないでしょうか。

3年前に車、一昨年に自宅マンションを購入し、差し当たって大きな現金を必要としそうな事がありません。

【相談者プロフィール】

・女性、39歳、会社員、年収400万円弱

・夫:39歳、会社員、年収580万円 ・子ども2人:9歳、6歳

・住居の形態:持ち家(マンション、近畿地方)

・毎月の世帯の手取り金額:52万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:180万円

・毎月の世帯の支出の目安:35万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:7万7,000円

・食費:6万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:5万円

・保険料:2万5,000円

・通信費:9,000円

・お小遣い:4万円

・その他:6万9,000円

【資産状況】

・ボーナスからの年間貯蓄額:120万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):230万円

・現在の投資総額:2,620万円

・現在の負債総額:2,350万円

秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼FP YouTuberの秋山芳生です。相談者様は、運用資産と現金資産のバランスをどう取るべきか悩んでいます。しかし、総資産のうち何%を現金にするかを考えても、実際の不安は消えません。今回は、現在の家計を診断しつつ、将来にかかる費用を考えながら、現金の役割と投資による資産形成のバランスについて一緒に考えていきましょう。

家族構成と家計をチェック

まず、家族構成から確認していきます。夫婦ともに39歳の会社員で世帯年収は980万円、お子さんは9歳と6歳で、小学3か4年と小学1年と思われます。マンションを購入しており、住宅ローンの残債が2,350万円あります。手取り収入は52万円あり、住宅費は7.7万円と考えると、住宅費の比率は収入の約15%なので十分に抑えられていると言えます。
一方家計の中で割合が大きい支出は、教育費と保険料になりますね。

教育費は聖域化しすぎないように

教育費はお子さんの習い事の費用だと思われます。教育費は、「子どもの将来のための投資」と考えて無制限に支出し聖域化してしまうことがあります。子どもの可能性を最大限引き出してあげたいと思う親心はわかりますが、子どもが本当にやりたがっているか、主体性を伸ばしてあげられているかを考えて予算を組みましょう。

保険は見直しの余地あり

保険は、入りすぎの可能性があります。もちろん、死亡保障は必要になるので、お子さんが社会人になるまでの期間は、掛け捨ての生命保険で備えるのがよいでしょう。特に、収入保障保険のように、「毎月一定額が給付される」という保険は、「亡くなったら3,000万円の保障がでる」といった定期定額型にくらべて、保険料が少なく効率的になります。ご夫婦それぞれに収入があるので、万が一の場合でも破綻リスクは少ないと言えます。過度な保険の入りすぎには注意しましょう。

医療保険も、十分に対応できるだけの資産があるので、私は不要と考えます。最低限の死亡保障を備えるだけにして、それ以外は解約しても問題ありません。また、学資保険に加入している場合は、途中解約だと元本割れしてしまうので、そのまま大学入学時まで継続でよいでしょう。

その他の支出は全体的によくコントロールされており、問題無いでしょう。

いくら現金で持つべき?

一方で、教育費と保険料は割合が大きいのでひとつ一つ考えていきましょう。

この2、3年の内に投資をはじめた人は上がり相場ばかりを経験して、「投資すればするほど儲かった」という成功体験から、多くの資産を運用に回してしまいがちです。しかし、現金で貯めるべきお金まで投資に回してしまっていると、リスク許容度を超えた運用になり、損失が出てしまうことがあるので注意が必要です。

では現金の必要額はいくらかというと、基本的には生活防衛費と、10年以内に発生するライフイベント費用の合計となります。

生活防衛費は6カ月分。使わないことが前提

生活防衛費は、一般的に会社員の場合は生活費の6カ月分と言われています。会社員の場合、傷病手当もあるので、要件を満たせば働けない場合も給料の2/3ほどが1年半にわたり支給されます。生活防衛費の6カ月分の生活費と傷病手当を合わせると、1年半はそれまでの支出と変わらない生活を送ることができます。まず生活費防衛費6カ月分の現金は常に確保するようにしましょう。

相談者様の場合は、1カ月あたり35万円の生活費なので、210万円の現金があれば生活防衛費は十分ということになります。この生活防衛費は「万が一のとき」のお金になりますので、基本的には使わないことを前提に貯蓄しておきましょう。

10年以内に使うお金は生活防衛費とは別途現金で

直近10年以内に使う可能性のあるお金は、生活防衛費とは別に現金で用意しておくとよいでしょう。例えば、子どもの受験費用や車の頭金、旅行費、リフォーム費用などです。このお金を運用に回してしまっていると、いざ使おうと思ったら市況が悪く元本割れをおこす可能性もあります。

相談者様の場合は、生活防衛費は貯まっているけれど、10年以内に必要な現金も運用に回ってしまっている可能性があります。逆にいうと、運用に回すのは最低でも10年は使わない確信を持ったお金だけにしましょう。

ライフイベントを書き出した表を作りましょう

できれば向こう10年のライフイベントを年ごとにプロットした表を作り、特別費として発生する可能性のある費用を洗い出しておくとよいでしょう。おすすめはエクセルなどの表計算ツールをつかい、家族全員の年齢推移をつくって、何年後に何歳になっているのかを実感することです。現在9歳のお子さんがいらっしゃいますが、9年後には18歳になっており、大学受験をしているかもしれません。このリアルな実感を持つことができると、必要な支出分は現金で貯める習慣ができると思います。

逆に言えば、運用に回してよいのは、10年以上は使わないお金です。現金の必要額は人により異なります。「現金比率」という割合で考えるのでなく、ご自身にとっていくら必要かを計算し、残りを投資に回すと安心感をもつことができるでしょう。

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