「有事の金」今が買い?金の投資メリットとデメリット、買い方を解説

2022年2月から始まったロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、「物価高」「ドル高円安」「米国債の金利上昇」といったように世界の市場が大きく揺れ動いています。

そんな中でも特に注目を集めているのが「金価格の上昇」です。2020年1月のNY金先物価格は1,800ドル台を推移していましたが、3月にはNY金先物価格が2,000ドルを突破するまで上昇しました。

7月初旬頃ではNY金先物価格は1,800ドル前半とやや落ち着いていますが、混迷とした世界でいざ何が起こるかわからない状況が続いていますので、金価格も今後どうなるのか読みづらい見通しとなっています。

「有事の金」と言われますが、金は本当に今が買いなのでしょうか? 金のさまざま購入方法についてもわかりやすく解説しましょう。


金投資のメリット:世界に通用する「共通通貨」

まず金投資のメリットとして挙げられるのは、「金が世界万国に通用する『共通通貨』」であるということです。どの国に行っても金の価値は認められており通用します。金価格がゼロになることはまずないといってよいでしょう。

また、「有事の金」ともいわれるように、世界的な戦争・紛争や大災害などが起こったりして地政学的リスクが高まったときに金価格は上がる傾向にあります。

さらに金の価格は株式や債券、不動産の価格とは違う動きを示す傾向があるので、資産分散の意味で、資産の一部を金に換えておくことは大きな意義があると考えます。

金投資のデメリット:インカムゲインは得られない

以上のように金投資にはメリットがある一方で、さまざまなデメリットもあります。

まず金には、預貯金の利息や株式の配当のようなインカムゲインはありません。あくまで売買益(キャピタルゲイン)でしか利益を生み出せません。

成長資産でないがゆえに金は資産運用の主役ではなく、あくまで「脇役」として扱うのがベターといえます。一般的に金は全保有資産の1割程度を持つのがセオリーとされています。

また、有事でないとき、例えば世界経済が順調に成長しているときなどは、金価格は上昇しにくい傾向にあることも、金投資のデメリットの一つといえます。

いろいろな買い方がある!金を購入できる商品を紹介

金投資にはいろいろな購入方法があります。これから一つずつ紹介していきますので、自分に合った金の購入方法を探してみましょう。

金地金:金の延べ棒を長期で保有したい

金といえば「金の延べ棒」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。金の延べ棒(地金)を、長期保有を前提に投資する基本的な投資方法です。

金地金には5g、10g、20g、50g、100g、200g、300g、500g、1kgといったように重さによって種類があります。

なお、500g未満の金地金を買う場合は購入手数料がかかりますが、500g以上の金地金を買う場合は購入手数料がかからないのが一般的です。

もし金地金を購入した場合、購入金額がいくらになるか、例を下表に挙げてみました。

・5g:4万3,970円

・10g:8万7,940円

・20g:17万5,880円

・50g:43万9,700円

・100g:87万9,400円

・200g:175万8,800円

・300g:263万8,200円

・500g:439万7,000円

・1kg: 879万4,000円

※2022年6月28日時点の税込価格(田中貴金属工業の場合)

200g以上の金地金を購入する場合、100万円以上もの大金が必要となります。よほどまとまった余裕資金がないと、投資するのは難しいといえるでしょう。

一方で5g・10g・20gの金地金を購入するのであれば、購入価格は20万円弱に抑えることができます。「少額でもいいので金地金を買って保有したい」という人は20g以下の金地金を購入してみてはいかがでしょうか。

地金型金貨(コイン):美しいデザインに魅せられる「美術品」

「金地金だと高くてちょっと手が出ない……」という人は、地金型金貨(コイン)を購入する選択肢もあります。

金地金と比べてコインは少額で購入でき、コイン自体に美しいデザインが施されていることもあって、「美術品」のように大切に扱う金貨コレクターの人もいると聞きます。

日本で購入できるコインは主に以下の3種類があります。

・ウィーン金貨(オーストリア発行)

・メイプルリーフ金貨(カナダ発行)

・カンガルー金貨(オーストラリア発行)

コインは重量によって1オンス(=約31.1035g)、2分の1オンス、4分の1オンス、10分の1オンスの4種類があり、日々の金価格に応じてコインの価格が決定します。

コインの購入価格の具体例を以下に挙げてみました。

※2022年6月28日時点の税込価格(田中貴金属工業の場合)

金地金と比べると、コインは手を出しやすい購入金額といえそうです。

1オンス、2分の1オンスともなると高額になりますが、4分の1オンス、10分の1オンスなら買い求めやすい価格といえるでしょう。

コインを取り扱う際に注意したいのは、傷つけたり形状を損なったりすると、コインの価値が下がってしまうことです。コインの保管には特に注意が必要です。

純金積立:毎月コツコツ積み立てて純金を地道に購入する

「金投資に興味があるけれど、いきなり金地金やコインの投資から始めるのはちょっと抵抗感がある……」という人は、純金積立から始めてみるのもよいでしょう。

毎月1,000~3,000円程度(1,000円単位)と無理のない金額を設定し積立をしながら純金を購入できるので、金投資の入門編として始められます。

また、ボーナス時など資金に余裕があるときや、金価格が大きく下がったときなどには、まとまった金額で「スポット購入」を、多くの取扱会社では無料で行うこともできます。

純金積立を取り扱っている主な会社は以下のとおりです。

※2022年6月28日時点のデータ(SBI証券 楽天証券 田中貴金属工業)

金ETF:株式投資のようにリアルタイムで取引できる

純金を直接保有する投資方法ではありませんが、金価格と連動するETF(上場投資信託)を購入するのも、金投資の一つの選択肢といえます。

株式と同じように、市場を通じてリアルタイムで売買ができるので、株式投資に慣れている人であれば金ETFから始めてみてよいかもしれませんね。

また、金地金やコインなどと違って、保管する手間や費用、盗難のリスクについて頭を悩ませる必要はありません。

日本の市場に上場している主な金ETFは以下のとおりです。

金投資は「平時に買い」と「有事に売り」が正解

よく「有事の金」と呼ばれますが、有事のときは金価格が上昇しているときです。高くなっているときに金をまとめて買うのは必ずしも良策とはいえないでしょう。

金価格が上がったときは「売り」を選択して、平時にはコツコツと金の「買い」を選択する。これが望ましい金投資の手法と考えています。

ちなみにここだけの話ですが、私はiDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)にて金価格と連動する投資信託を、掛け金のうちの1割を積み立てており、約2年半もの間で約22%(2022年6月27日時点)のトータルリターンの運用実績をあげています。

金投資についてはコツコツ積立をしながら、焦らずじっくり長期保有していき、いざというときに売るのがよいのではないでしょうか。

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