株価が下落していても「つみたてNISA」や「iDeCo」をやめてはいけない理由

コロナ禍で投資を始めた方にとって、いまは初めての大きな下落という局面ではないでしょうか。

コロナショックで大きく下げた後に、つみたてNISAや iDeCoを始めていたのなら、基本的には含み益(保有している利益)は増え続けていたことでしょう。だからこそ、少し調べただけで何となく投資を始めた人は、もう投資をやめたくなってしまう相場と言えるのではないでしょうか。

SNSなどでも、投資初心者という方が「つみたてNISAをやめました」とおっしゃるような投稿を複数目にします。ただ、声を大にして言いたいのは「せっかく始めた積み立て投資、いまやめてしまうのはもったいない!」ということです。

こういった下落局面こそ、長期的に見れば積み立て投資のチャンスが到来しているので、決して止めてはいけないタイミングなのです。今回は、なぜいま積み立て投資を止めてはいけないのか、その理由と、積み立ての重要さを解説します。


なぜ下落局面で積立投資をやめてはいけないのか。

積み立て投資は「ドルコスト平均法」という、投資のコスト(費用)を平均化させていく手法を採用しているからです。ドルコスト平均法というのは、自動で合理的に購入する投資法です。ドルコスト平均法を理解するために、まずクイズに答えてみてください。

【問】
ABどちらが優位性のある(利益のでやすい)積立投資の方法だと思いますか?

A:毎月1万円ずつドルを買う(定額)
B:毎月100ドルずつドルを買う(定量)

【正解】
A:毎月1万円ずつドルを買う(定額)

「定額」で購入していく方が、「定量」で購入していくより有利な場合が多いのです。なぜかというと、「定額」で購入していく方が、「定量」で購入していくより最終的な平均取得コストを平準化する効果があるからです。

定額で購入すると、安い時はたくさん買えて、高い時は少なく買うことになります。そのため、いつのまにか自動的に平均取得コストが平準化されていくのです。価格変動のリスクをプラスに取ることができます。

これがドルコスト平均法です。価格が平均取得コストを上回っている時に売れば利益を生むことができます。

取得コストだけではないメリット

また、例えば「毎月◯万円ずつドルを買おう」というのは、ただ機械的に買えばいいのでルールとしても守りやすく、実行しやすいというメリットもあります。もちろん、底値を判断して安い時に一気に買う方が利益は大きいですが、それがいつなのか判断するのはプロでもなかなか難しいものです。

足元のような大きな下落局面では、恐怖心にかられたり、長期投資で始めたことを忘れて「パニック売り」をしてしまうことも。そのように、人は合理的ではない行動を取る事があるので、機械的に買えばよく、保有するだけがルールのドルコスト平均法は取り組みやすく、ルールとしても守りやすいのもメリットと言えます。

通常時の購入頻度は、月1から2などで十分と考えます。一方、今年のような値動きの激しい相場では、トータルの金額は変えず少額で週一など、頻度を増して定額で買われてみてはいかがでしょうか。

ドルコスト平均法での投資先

ドルコスト平均法はどのような投資先が考えられるかといいますと、定額で積み立てられるような金融商品を選んでください。

ドルと名前がついていますが、外貨投資に限ったことではなく、上下に変動している相場、ジグザグに動くような相場で力を発揮します。そのため、上がりそうな投資商品を選んで決まった時期に決まった額買うだけです。投資期間全体にずっと上げていたり下げていたりする相場には向いていません。

ポイントは「時間」。長期間投資する方が恩恵を受けられますので、長年上昇しそうなチャートを見つけることが必要です。

長年上昇…というと米市場を思い付かれる方は多いのではないでしょうか? 米国の代表的な株価指数で米国の株式市場全体に対して約80%の時価総額比率を占めるS&P500の月足チャートを見ると、大きく下落する局面はあるものの、大きな流れでは40年以上右肩上がりであることがわかります。

この上昇がこれからも続くことを想定するならば、米市場は有力な投資先だと言えます。そこでアメリカ全体に投資できるETF であるVTI:バンガード・トータル・ストック・マーケットETFを簡単に紹介します。

VTIは3,500以上の銘柄を保有し、S&P500指数よりさらに幅広いのが特徴です。アップル・マイクロソフト・アマゾンドットコム・フェイスブック・アルファベット・テスラ・バークシャーハサウェイなど、アメリカを代表する銘柄が組み込まれています。

時価総額ベースでウエイトを算定しており、米国市場の99.5%をカバーできます。20年以上に渡って運用されているETFで、経費率が0.03%と低いのも魅力です。直近配当利回りは1.58%で、配当利回りがあるのも長期投資ではメリットです。VTIの月足チャートを見てみますと右肩上がりで、これからもこうなり続ける保証はありませんが、米国株の上昇が続くのであれば恩恵を受けられるETFといえます。

つみたてNISAは投資対象商品が限定されているため、VTI へは直接投資ができませんが、つみたてNISAでVTIに投資したいなら、投資信託を通じて間接的にVTIへ投資する商品もあるので、ご自身の口座で取り引き可能な商品があるか、調べてみてくださいね。

6月20日週「相場の値動き」おさらい

パウエル議長の米上院銀行委員会での証言で、過度なインフレを抑制するために継続的な利上げをしていくというFOMC同様タカ派的な内容でしたが、無難に通過したという印象です。

またパウエル議長は下院の議会証言でもインフレ抑制への無条件の取り組みの姿勢を示しており、「まずはインフレを抑えてから、景気対策は次の話だ」という姿勢が明らかになったと感じています。

6月製造業PMIの結果も市場予想を下回る弱い結果となっており、景気後退懸念は足元で強まったといえそうです。

6月24日(金)の日経平均株価は、前日比320円72銭高の2万6,491円97銭と続伸。6月17日(金)の日経平均株価は前日比468円20銭安の2万5,963円でしたので、週間では528円97銭の上昇となっています。


VTIのように、複数の銘柄に分散して投資することで市場全体の動きに連動した投資成果を目指す「インデックス投資」は、初心者が資産形成する上でとてもやりやすいと思いますし、ドルコスト平均でつみたてNISAや iDeCoなど税制に優位性のある制度も活用しながら、仕組み化しちゃえば誰でもできるとても簡単な投資だと思います。

すでに積み立て投資をされている方は、やめずに続けて行くことをおすすめします。まだ始めていない方はこれをきっかけに始めることも一考かと。ただ景気後退懸念があり、これから逆金融相場、逆業績相場(つまり下落局面)が待っていると考えておりますので、出来る範囲で、また学んでからでも遅くないと思っています。もしできれば、今年のようにボラティリティの高い相場では、チャートを見ながら短期で売買するのが利益を効率的に得るためには向いているやり方だと考えています。

なお、積み立てが可能な投資商品にはETFのほかに、投資信託、外貨MMF、純金(銀、プラチナ)積立、るいとう(株式累積投資)、くりっく株365などがあります。皆さんの投資生活の参考になれば幸いです。

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