参院選まで4日「与党圧勝なら『空白の3年』」改憲・軍拡へ加速か

参院選の投開票まで5日。このまま無風なら、参院全体(248議席)の過半数維持を勝敗ラインに掲げる与党の勝利は確実。その後、国政選挙のない「空白の3年」に突入。改憲と軍拡への流れが加速するのではないか。時事通信社解説委員の山田惠資さんに聞いた。(新聞うずみ火 矢野宏)

自民党は公約で、防衛力の抜本的な強化を掲げている。NATO(北大西洋条約機構)の加盟国が防衛費の目標をGDP(国内総生産)の2%以上としていることを念頭に、来年度から5年以内に必要な予算水準の達成を目指すと明記している。

また、弾道ミサイル攻撃を含む、日本への武力攻撃を抑止し、対処するための「反撃能力」を保有することも盛り込んでいる。

自民党が勝利した場合、国政選挙のない「空白の3年」に入る可能性が大きい。山田さんは「岸田政権は改憲と軍拡路線を進めるだろう。理由は、保守勢力の支持をつなぎとめるためだ」との見方だ。

「岸田首相はこれまで、安倍元首相や麻生副総裁の顔色をうかがい、『無色透明』と揶揄されるほど独自性を出せていません。岸田さん本人は改憲や軍拡路線よりも経済を優先したいはず。だが、参院選で与党が過半数を維持して勝利したとなれば、その政策が認知されたことになり、安倍氏らタカ派勢力への配慮が今後も続くでしょう」

時事通信社解説委員の山田さん

さらに、山田さんは「ウクライナ情勢に便乗し、勇ましさが前面に出るような風潮はわかりやすいが、怖い」と語り、「防衛力を増強しないようにするのが外交力。今こそ外交の出番なのになおざりにされている。野党はもっとしたたかに訴えてほしい」

気になるのが投票率だ。前回は48・8%と、過去2番目の低さだった。昨年の衆院選後、関西学院大教授の冨田宏冶さんから「3対2対5の壁」の法則を聞いた。3は保守系、2は革新系、5は棄権。16年参院選、17年衆院選、19年参院選、21年衆院選とも「壁」を破れなかった。民主党政権に交代した09年の衆院選の投票率は69%だった。

「与党は投票率が低い方が有利」というのが鉄則ゆえ、「選挙を盛り上げないようにしよう」と考える。「どうせ変わらない」との気持ちが社会にはびこると、投票率が下がり、ますます与党が盤石になる。

「自分が政治に参加しているという当事者意識を持つことが大切」と話す山田さん。今回の参院選は「この国が平和主義を捨てるのかどうか」の分岐点となりそうだ。

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