<社説>参院選・安全保障 「辺野古」明確な争点に

 ロシアのウクライナ侵攻で世界の安全保障環境が急変している。国際情勢の変化に対し、国防費を増やして抑止力の強化や新たな対処能力を整備するのか、軍事力の増強ではなく外交による紛争回避に軸足を置くのか。岐路に立つ日本の安全保障政策を左右する重要な参院選となる。 米中対立も深まる中での安保政策の方向性は、米軍と自衛隊の軍事施設が集中する沖縄に特に影響する。住民の生命、財産を守る方策や基地負担について、冷静に投票先を見極めたい。

 米軍普天間飛行場の移設に伴う辺野古新基地建設計画の是非も重要な争点だ。沖縄選挙区で事実上の一騎打ちとなる伊波洋一氏、古謝玄太氏の立場は明確に異なる。

 伊波氏は「県民にこれ以上の過重な基地負担を押しつけるべきではない」として計画に反対する。古謝氏は「普天間飛行場の危険性の除去のため、最も早い現実的な解決策」として計画を容認する。

 政党間では防衛費増額の賛否や、戦後日本が安全保障の国是とする「専守防衛」の認識を巡って違いがある。

 自民は参院選公約で、北大西洋条約機構(NATO)諸国の国防予算の対国内総生産(GDP)比2%以上を念頭に来年度から5年以内に防衛力強化を目指すとし、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有も明記した。野党の中でも日本維新の会や国民民主、NHK党は同様に防衛費増額や反撃力の保有を掲げ、安全保障面では自民と足並みがそろう。

 与党の公明は、選挙公約で防衛力の着実な整備・強化をうたっているが、防衛費の増額目標や敵基地攻撃能力には具体的に言及していない。

 立憲民主は「総額ありき」として防衛費増額で数値目標を掲げる自民を批判する。一方、平和外交との両輪とした上で、日米同盟を基軸とした防衛力強化の姿勢も示す。

 これに対し共産、社民、れいわは、敵基地攻撃能力の保有や防衛費の増額は「専守防衛を超える」として反対する。防衛強化はかえって日本を戦争に巻き込むリスクを高めるとし、外交による解決や現行憲法の実践で一致する。

 沖縄選挙区の候補者もそれぞれの考え方を示す。

 伊波氏は「台湾有事」を巡って緊張が高まる沖縄周辺の情勢について「外交による解決策の模索」を主張する。外交努力を尽くすべきだとの考えを示すとともに、日本財政に拡張余地はないとして防衛費の倍増に反対する。

 古謝氏はウクライナ情勢を受け「対話だけで自国の平和を守るのは難しい」との認識を示す。米国などパートナー国との連携強化による「抑止力」向上を訴え、アジア・太平洋の安定に必要な防衛費を積み上げるとする。

 ウクライナ危機への不安に乗じて重大な方針転換を押し切れば禍根を残す。真の平和と安定とは何か、各党が徹底して議論を尽くすことだ。

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