同性愛を初告白したFIFA審判 「殺される恐怖がある」と吐露

先日、元ブラジル代表選手がバイセクシュアリティであることを公表したことが話題になった。

そうしたなか、『Globo』は、FIFA審判員で初めて同性愛者であることを告白したレフェリーが現われたと報じた。41歳のブラジル人審判、イーゴル・ベネヴェヌトさんだ。

「サッカーは幼い頃から自分が深く憎んできたスポーツだ。

あの雰囲気、マチズモ、ジョークに見せかけた偏見に耐えられなかった。

サッカーは男のものであり、私は幼い頃から自分がゲイであることを知っていた。

自分のセクシュアリティを隠すのに、これ以上パーフェクトな場所はなかった。

だが、(選手として)プレーするという選択肢は長続きしなかったので、唯一の可能性のある道に進んだ。レフェリーになったのだ。

41歳の私は23年間もレフェリーに専念してきたが、今日まで本当の自分であったことはない。

ゲイの人達は自分らしくない傾向がある。ストレートの世界の期待を裏切らないように態度を制限するからだ。

私は同性愛嫌悪の暴力から身を守るために自分を犠牲にして生きてきた。

そして、ゲイにとって最も敵対的な場所のひとつ(サッカー界)に身を置くことになった。それを知っていたからこそ、サッカーを嫌いになった。

女性とデートをして、自分の本能をごまかそうともした。家族には宗教が大きな存在になっており、自分も教会のなかで育った。

レフェリーでいることは、自分に必要な力がある立場を与えてくれる。

自分のセクシュアリティを隠すためにそれを選んだのか?そうだ。だが、それ以上でもある。

自分自身をゲームの所有者、権威ある男として位置づけ、それは自動的に男らしさに満ちた姿になる。

『俺はここにいるぞ!』と言わんばかりに命令し、尊敬を求めたかった。

自分はゲイだが、他の人達と同じ普通の人間だ。女性が好きだからといって、私より優れているわけではない」

「私は男性に惹かれるが、そのためにピッチにいるわけではない。男を探しているわけではないし、誰かを欲しているわけでもない。何かをやるためにそこにいるわけではない。

敬意が欲しい。私がどんな環境でもありえる人間であることを理解して欲しい。

ゲイだから誰とでもセックスをしたいとか、誰のことでも見たいとか、そういうわけではない。それとは全く違う。ただリスペクトと自分の好きな場所にいる権利が欲しいだけだ。

我々ゲイはサッカー界に多くいる。どこにでもいるが、99.99%は隠れている。

レフェリー、選手、監督、結婚して子供がいたり、別居したり、二重生活を送っていたり…。

今の自分はサッカーを愛しているとは言えない。少なくとも、サッカーファンのような愛はない。

どんな試合も楽しむためやビールを飲むために見るわけではない。

自分にとっては純粋にテクニカルなものだ。他人がプレーにワクワクする一方、私はルールや反則、オフサイド、審判の動きを観察している。

私は勤勉であり、いいプロフェッショナルだ。

ブラジルサッカー連盟には600人の審判がいるが、私はトップ50に入っているFIFA審判員だ。自分が愛しているのはレフェリーであること。

審判のなかでは私がゲイであることは知られているが、とても尊敬されている。

レフェリーになるために全てをかけたが、そのために高い代償も払った。

隠れて生きるために本当の情熱を脇へ追いやった。

できることなら、医者になりたったが、自分に多くの選択肢があるとは思えなかった。ゲイであることを公言して生きることは考えられなかった。

サッカーは生業であり、今日までは隠れ家でもあった。この牢獄から自分を解放したい。恋愛もしたいし、平和にレフェリーもしたい。

難しいのは死への恐怖に対処すること。

ブラジルは世界で最も多くゲイが殺されている国だ。偏見だけでなく死ぬこともある。暗黒の社会だ。

サッカー界のゲイはパンドラの箱にいる。選手、レフェリー、ファン…我々は大勢いる!

この狭いクローゼットにもうスペースはない。これ以上は入らない。

もうたくさんだ!ジョークには耐えられない。これまでと違うのは、自分はもう息苦しくないということ」

自分の素性を隠すために、あえて嫌っていた男性的なサッカー界に入ったそう。

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ただ、同性愛に厳しいブラジルでは死の恐怖も感じているという。

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