若者の選挙投票なぜ大事? 福井大学教授に聞く社会参加の意義「無関心ではその世代が結局損」

「若い世代が社会課題を共有した上で一票を投じることが大切」と話す橋本康弘教授=福井県福井市の福井大学文京キャンパス

 選挙権年齢が18歳に引き下げられてから5度目の国政選挙となる参院選の投開票が7月10日行われる。法教育や公民教育に詳しい福井大学の橋本康弘教授に、若者の政治・社会参加の重要性や、身近な社会課題の解決策を考えながら政治や選挙に関心を高めた福井県立勝山高校の探究学習の意義を聞いた。

 今春、高校社会の「現代社会」が新科目「公共」に移行した。現代社会の科目が始まった昭和50年代は、公害や(先進国と途上国の経済格差の)南北問題などが発生し、構造化された社会問題を学ぶ必要があった。今は日本も世界も非常に複雑な問題を抱えており、若い世代の社会参加意識を高め、実際に行動することを真剣に考えてもらわないといけない。これからの社会をつくる世代が無関心ではその世代が結局損をし、社会全体の利益を損なう。

 公共の授業は、選挙権年齢や成人年齢の引き下げを背景に、主権者教育を重視する。若者たちが世の中の問題を“自分たちの問題”として共有し、社会参画していくきっかけづくりでもある。若者たちに「選挙に行け」と強要してもだめで、若い世代が社会課題を共有した上で一票を投じることが大切だ。

 社会問題を取り上げ、その解決の在り方を考えるのは公共の授業のメーンストリーム。市職員や新聞記者が外部講師を務めて課題を見つけ、約1カ月かけて学びを深める勝山高の取り組みは、先進的な在り方を示した。

 価値観が多様化した現代の若者には、レールに乗って就職するだけでなく、起業も含めて多様な選択肢がある。どんな価値を実現すべきかを考え、何を選ぶか判断が求められる。そうした人生設計の判断と、どんな社会を実現したいかを考えて政治家を選ぶことは実はつながっている。

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 だからこそ、政治家は抽象的な議論ではなく、政策を具体的に説明すべきだ。政策にかかるコストや弊害の解決までセットにして提案しないと、若者には響かないだろう。

 年上の世代は、若者の選択を許容できるかどうかが問われる。若者の考えを受け入れ、アドバイスすることが大切。「我々の世代からするとおかしい」と否定しては、今の日本にとって重要な「問題の共有化」はできない。

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