19年の参院選自民党比例でトップ当選した業界団体の全国郵便局長会が刑事告発されていた カレンダーの無償配布問題で

全国郵便局長会(以下、全特)が日本郵便の経費で購入したカレンダーを無償で譲り受け自民党議員の後援会関係者らに配布していた問題で、全特の幹部等が政治資金規正法違反の罪で刑事告発されていたことが9日までに分かった。日本郵便から調査の依頼を受けた日本郵政は報告書で、全特は任意団体なので政治資金規正法(以下、規正法)に抵触する問題は生じないとしたが、告発人は内部文書などを基に分析した結果、全特が規正法上の政治団体に該当するとした。(フリージャーナリスト・鈴木祐太)

郵便局長会のHP

告発されたのは、参議院選挙に立候補している長谷川秀晴氏ら全特の関係者ら8人。

全特は小規模の郵便局長でつくる任意団体で、約1万9000人の会員がいるとされている。2013年以降、参院比例区において自民党から組織内候補を出しており、2016年には徳茂雅之氏、2019年には柘植芳文氏が自民党比例代表において最多得票を取り当選させている。

告発状によると、全特の会員らは日本郵便の経費で購入したカレンダーを自民党の国会議員の関係者らに配布した。日本郵便が2018年から20年までの3年間に発注したカレンダーは約507万冊、総額は約8億円を超える。この問題が西日本新聞のスクープとして報道された。これを受けて日本郵便は日本郵政株式会社に調査を依頼し、調査報告書が発表されたが、全特が任意団体ということから規正法には抵触しないとして法律違反はなかったと結論付けていた。しかし、告発状では、規正法は「特定の公職の候補者を推薦し、支持」する活動を「その主たる活動として組織的かつ継続的に行う団体」も政治団体であると定義しているとして、全特の公表されている資料だけでなく、内部資料も詳細に調べた結果、全特は2018年から21年までは事実上、政治団体であると結論付けている。

全特が政治団体であると断定した理由は、全特の「会則」が全特の「目的達成のため、政治的、社会的主張を行い行動する」と明記し、内部文書『政治対応の基本的な考え方』には「参議院比例代表に組織を代表する候補者を擁立し、関係する組織が一体となって、政策決定の場である国会に送り込むように取組む」と明記していたことが挙げられる。

また、全特の支出に占めるカレンダー無償配布支出の占める割合が高く、「活動の主たる部分を占めている」ことも理由としてあげられる。これは、全特の決算書を基に告発人である上脇博之神戸学院大学教授が計算したものだ。

一例をあげてみよう。

2020年の全特の事業費支出は約3.3億円だったが、これにカレンダー代の約3億円を加えると、事業費におけるカレンダーの無償配布の割合は47.6%となる。事業費の中でこれだけの割合を占める以上、カレンダーの無償配布が「主たる活動」と結論づけられても仕方ないだろう。

告発した上脇教授は次のように話す。

「全特の会則など内部資料を入手して分析し、少なくとも2018年以降毎年の活動実態を確認したところ、全特は『特定の公職の候補者を推薦し、支持』する活動を『その主たる活動として組織的かつ継続的に行う団体』だと判断できるので、規正法上の政治団体であると確信しました。また、全特は日本郵便の経費で購入したカレンダーを無償で譲り受けていましたが、これは規正法上の寄附を受け取ったことになります。しかし、規正法は政治団体が届け出をしないまま寄附を受け支出をすることを禁止していますので、全特は任意団体だと主張し政治団体の届け出をせずに、日本郵便から寄付を受け取っていたわけで、規正法に違反します。また、規正法は会社が政党及び政治資金団体以外の者に寄附すること、会社にその寄附を要求したり受け取ったりすることを禁止しています。しかし全特は日本郵便にカレンダーの作製と無償提供を要求し、カレンダーを無償で受け取っていたので、これも規正法に違反します私は、以上の規正法違反の罪で長谷川秀晴氏ら全特の役員を東京地検特捜部に刑事告発したのです」

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