安倍元首相銃撃から一夜 栃木県民「一票の重み実感」 感情論影響には懸念も…

候補者の訴えに耳を傾ける有権者たち=9日午後3時50分、宇都宮市内(写真は一部加工しています)

 安倍晋三(あべしんぞう)元首相が演説中に銃撃され、死亡した事件から一夜明けた9日、県内では凶行の衝撃とともに、選挙や投票の意味に改めて思いを巡らす有権者の姿があった。暴力で政治の議論が停滞してしまう懸念や事件の投票行動への影響…。1票の重みを再認識した人もいる。10日は参院選の投開票日。「一人でも多くの人に投票してほしい」。そう訴える声もあった。

 9日午後。宇都宮市の大型商業施設に候補者の熱のこもった演説が響く。同市、会社員望月佑樹(もちづきゆうき)さん(38)は、演説会場での警戒感の高まりを感じた。

 銃撃事件の影響で「自由な発言ができなくなるのでは」と危惧する。暴力により政治の場の議論が停滞することは「望まない」と断言。「政策の良しあしをきちんと指摘できる環境が重要」とし、自由闊達(じゆうかったつ)な議論の必要性を強調した。

 同市下川俣町、会社員大杉純一(おおすぎじゅんいち)さん(54)は、同市中心部の交差点で候補者の演説を聞いた。「暴力に頼ってはならず、物事は言論の場で訴えるべきだ」と事件を批判。「給与が上がらない中、物価高などで苦しい思いがある。国民の不満を政治で解決してくれる政党に投票したい」。

 事件が投票行動に与える影響について懸念する声も。県央在住の公務員石崎貴久(いしざきたかひさ)さん(49)は「感情論ではなく冷静に投票してもらいたい」と願った。

 鹿沼市、学童指導員小太刀雅美(こだちまさみ)さん(59)は夫ともに街頭演説に耳を傾けた。選挙演説中に政治家が銃弾に倒れたことで、「一票は大きい」とその重みを改め実感した。「1人でも多くの人に投票へ行ってほしい」と語った。

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