〈安倍元首相追悼〉 上越地域との縁 深く 来訪多数 市民らと交流

 8日、凶弾に倒れ急逝した安倍晋三元首相は、歴代の首相の中で、上越地域を来訪することが多かった。政治思想を同じくし、政界入りから安倍元首相に師事し行動を共にした高鳥修一衆院議員(自民・比例北陸信越)の地元ということもあったものの、古参の自民関係者は「本県出身の田中角栄氏を別にすれば、歴代首相として最も多かったのでは」という。

◇糸魚川大火 首相として法適用英断
 特に首相現職時代の2017(平成29)年1月11日、前年12月22日に大規模火災が発生した直後の糸魚川市駅北地区を訪問し被災地を視察、被災店舗の事業者らと懇談している。安倍元首相はこの火災が「自然災害」と判断し、火災として全国初となる「被災者生活再建支援法」の適用に踏み切った。

駅北大火直後の被災地を視察する安倍首相(=当時、2017年1月11日)

◇「大切な人材失った」
 被災した一人、山岸呉服店を営む株式会社山呉代表取締役の山岸美隆さん(67)は、突然の悲報に「とにかく信じられない」。「総理大臣から直接、大火のお見舞いとともに『災害前よりも、にぎやかなまちにします』と宣言をいただき、安心し心強く思ったものだった。同じ年齢と分かり「『共に頑張りましょう』の言葉も交わしてもらった」と振り返る。
 アジアや世界が不安定な状況にあって「立ち位置をしっかり定めるためにも必要、大切な人材を失ったと思う。まだ受け入れられない」と話した。

◇「弱者への共感」実感
 2011(平成23)年7月12日には、リネンサプライ事業者で多くの障害者を雇用している白星社(本社・上越市)の妙高工場(妙高市橋本新田)を訪れている。第1次安倍政権が退陣し「返り咲き」に向け、政治家として「充電」していた頃だった。

リネンサプライ会社工場を訪ねた際の安倍氏(2011年7月12日)

 同社の宮澤義幸社長(77)は、「まさかこんな中山間地まで来ていただくとは思わなかった。(今回の悲報に)ただただ驚がくしている。暴力による言論封殺は亡国の蛮行」と強く非難。その上で安倍元首相の人柄に触れ「障害のある従業員と接する姿を見て、常に弱い人の立場に立っておられる〝弱者への共感〟を肌で感じた」と話した。
 安倍元首相は、高鳥氏が障害者福祉を政治の原点にしていたこともあり、この分野でも理解を見せ、上越市大手町にあるポプラの家を訪問したこともあった。

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