参院選終わる

 先日、ちょっと驚くニュースに接した。自民党などが防衛費を増やすというが、もろ手を挙げて喜ぶ気持ちにならない-と、その人は述べたという▲発言の主は、海上自衛隊の呉地方総監部(広島県呉市)のトップ。国防費を増やすには「兆」単位の財源が要る。この経済状況で、防衛費だけ特別扱いできるのか-と、伊藤弘総監は問いかけた▲個人的見解と前置きしたが、国防をあずかる立場からあえて問題提起したのだろう。遠回しに「現実的な、地に足の着いた政治を」と言ったように思える▲元首相銃撃のショックを引きずったまま、参院選はきのう投開票され、与党が改選議席の過半数を得た。長崎選挙区も自民新人の山本啓介氏(47)が初当選。争点の一つが、防衛費の増額だった▲野党は消費税について減税や廃止を訴えたが、広がらなかった。消費税率を下げると税収が大きく減るが、どう補うか。かたや、防衛費を増やすならば、財源をどう工面するか。地に足を着けて議論を深めたとは言い難い▲叡智(えいち)の「叡」の字は「深い谷」と「目」の組み合わせで、奥深くまで目が届くことを意味するという。日本が谷に転落しないよう、足元を眼光で照らすような叡智が政治に要らないか。「当確」を続々と伝えるテレビを見ながらそう思う。(徹)


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