先週金曜日、広島県内各地で降った激しい雨。広島市の一部で避難指示が出るほどの雨でした。しかし、この雨を心待ちにしていた人も…。
史上、最も短かったことしの梅雨で農地が干上がっている農家です。
農家
「雨ごいでもするかという感じですよ」
先週は台風4号の接近に始まり、金曜日の大雨までほぼ毎日、雨が降りました。
きょうのテーマは、『恵みの雨になったのか? 日照り地区の明と暗』
主なアメダスの観測地点の梅雨期間の降水量と平年値を比較してみました。全体の8割強の地点で平年の半分以下となっています。そんな中での先週の雨、農家は少し一息つけたのでしょうか。
水不足に悩まされている2つの地区に注目しました。
・三次市 君田町 石原地区
・安芸高田市 高宮町 原田地区
恵みの雨は降ったのでしょうか?
台風4号が広島県から遠ざかった翌日の先週水曜日、三次市 君田町 石原地区 を訪ねました。取材に応じたのは、地元の集落法人「高幡」の曽根保さんです。
集落法人 高幡 曽根保さん
「台風が来るので雨を心待ちにしていたが、たくさん降らず、当てがはずれた」
曽根さんが示したのは、地区の水源である茂田川の水位でした。
曽根保さん
「黒い筋の上の草のところまでふだん水はある。それだけ水が少ない」
茂田川から水を引いている田んぼは、ひび割れていました。このままではイネの収量が減るなどの影響が出るということです。
すでに被害が出ているのがグリーンアスパラです。
曽根保さん
「これらもヒビが入っている。水不足が大いに影響している」
水不足でヒビが入ったり、先が割れたりする被害が出て、売り上げは半分に減っているということでした。
曽根さんが水やりをする潅水装置を動かしました。
曽根保さん
「こんな感じで かん水 します」
― かん水する量を減らしている?
「いや。特に減らしていない。途中でなくなる。時間を置いて、またやるような感じです」
アスパラにまく水は、山からの湧き水ですが、事情は川と同じです。
台風4号が接近した前の日には、こんな現象も起きていました。近くの庄原では1日で100ミリを観測する大雨が降ったにもかかわらず、君田では5ミリしか降らなかったのです。
集落法人 高幡 曽根保さん
「『降るだろう。降るだろう』と言っていたが、ここだけ降らなかった。もう雨ごいでもするか…という感じですよ」
同じ日、安芸高田市 高宮町 原田地区 です。42ヘクタールでコメを栽培する大規模農家「ハラダファーム本多」の本多正樹代表です。
ハラダファーム本多 本多正樹代表
「本当に天気予報ばかり見ている」
本多さんも台風4号の接近に期待していましたが…
「まあ、降りはしたが、雰囲気的には湿ったという感じ…」
ここでも一部の田んぼはひび割れたままでした。水源は、田んぼのすぐ近くにあるため池です。
本多正樹代表
「ふだんなら土が見えないくらいまで水がたまっている状況。これくらいになってしまうと本当に危機感を感じる。これから先、イネの穂が出る。そのときに水がないと非常に困る。やっぱり収量に大きく影響してくる」
本多さんは、肥料など農業資材の価格が高騰する中、収量が落ち込めば、経営がかなり厳しくなるとみていました。
その2日後の8日金曜日、県内各地でまとまった雨が降りました。君田町 石原地区 でも午後5時過ぎから激しい雨が降りました。
今度こそ、恵みの雨となったのでしょうか?
しかし、20分ほどで雨は上がってしまいました。
集落法人 高幡 曽根保さん
「まだまだ、これくらいの雨では…」
曽根さんは、アスパラ畑に向かいました。
曽根保さん
「まだ乾いた状態。上だけ少し湿っているぐらい。これではまだ、一息つけない」
一方、同じ先週金曜日の 高宮町 石原地区 です。午後4時過ぎ、一瞬、激しい雨が降って、すぐ上がったものの、近くで雷鳴も聞こえていました。
曽根保さん
「期待しています。あしたも雨マークですし、どうにか雨が降るかな。戻り梅雨的なところが来るんじゃないかな」
― 安芸高田市 高宮町 原田地区 では、金曜日の夜1時間ほど強い雨が降って、一息ついたそうです。一方、三次市 君田町 石原地区 では、金曜日の夜、けっこう雨が降ったが、アスパラの畑はまだ乾いたままで、一息つけていないそう。同じ県内でも場所によって違うようです。
― 今回の取材でわかったのは、雨の降り方が局所的で、地域のことをよく知っている農家でさえ、先が読めない状況になっていることです。日照り地区だけ適度に降ってくれればよいのですが、自然は甘くありません。一方で、去年のお盆のころのような災害級の大雨が降ると、壊滅的な被害を受けてしまいます。今週も雨は降りそうなので、なんとか雨が必要なエリアで適度な雨が降ってほしいと祈るばかりです。