黄金の3年間

 選挙が来るたびに思い出す言葉がある。「…この選挙1回きりで政治の何かが劇的に変わるとは思えない。だけど、一回一回の選挙でしつこく意思表示を続けていきたい」▲話を聞いたのはもう20年ほど前の選挙取材、話してくれたのは初めての投票に臨む20歳の女性だった。市民団体が開いた立候補者の討論会にスタッフとして参加していた。今なら“意識高い系”なんて呼ばれるのかもしれない▲物価高、コロナ対策、防衛や安全保障のこれから…。一昨日もきっと投票に行ったはずの彼女は意思表示の結果をどう眺めているだろう。与党の大勝で参院選が幕を閉じた▲「黄金の3年間」と呼ぶそうだ。次の参院選は3年後。衆院の任期満了は、さらにその3カ月先で、衆院を解散しなければ岸田文雄首相は向こう3年間、国政選挙の審判を受けることなく、政権を運営できる▲「選挙の結果は政権への信任だけではない。危機感を受け止め、全力で仕事を進めよというメッセージだ」…圧勝から一夜、首相は神妙な表情と静かな口調で“3年間”をスタートさせた。私たちは戦後最大級の危機にある、と▲政権はこの先、きらりと輝きを放ち、行く先を明るく照らす成果を挙げられるだろうか。何のため、誰にとっての「黄金」なのか-真価が厳しく試される。(智)

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