改憲「慎重な議論を」 自民大勝は「安定求めた結果」 参院選で栃木県内有権者

参院選の投開票から一夜明け、岸田文雄首相の記者会見のテレビ中継を見つめる来庁者=11日午後、宇都宮市役所

 自民党が大勝し、単独で改選過半数の議席を獲得した今回の参院選。投開票から一夜明けた11日、県内の有権者からは「国民が安定を求めた結果」などと評する意見があった。憲法改正に前向きな「改憲勢力」が国会発議に必要な3分の2以上を維持。岸田文雄(きしだふみお)首相も改憲に意欲を示す中、「すぐ手を付けることか」「国民の総意ではない」などと慎重な議論を求める声も上がった。

 鹿沼市日吉町、自営業関口善治(せきぐちぜんじ)さん(71)は、自民が圧勝した今回の参院選を「国民が変革より安定を求めた結果だ」と受け止めた。ロシアのウクライナ侵攻などで争点となった物価高対策。消費税減税を掲げた野党の主張は、代替財源の説明が不十分に映った。「具体性のある対案を示して与党をただすのが理想だが、実行されておらず残念」と野党に注文を付けた。 小中学生の3人の子どもを育てる小山中久喜、主婦長峰沙織(ながみねさおり)さん(44)は、子育てや少子化対策を重視して選挙戦を見守った。「物価高対策は、与野党とも公約が現実性に欠けると感じた」と話す。自民党が訴えた賃上げの実現にも疑問を持った。「結局は消費者が生活水準を下げるしかないのか」と声を落とす。

 11日午後。岸田文雄首相は参院選結果を受けた記者会見で、早期の憲法改正発議に向け意欲を示した。

 「改憲はすぐさま手を付けるべきことか」。長峰さんは首をひねる。

 感染者数が増加傾向の新型コロナウイルス、出口の見えないウクライナ情勢…。改憲よりも優先順位の高い課題があると考えている。

 参院選では改憲発議に必要な勢力が確保された。しかし、長峰さんは「結果を国民の総意だととらえてほしくない。国政だけで議論が性急に進むことが怖い」と胸中を明かした。

 宇都宮大国際学部4年の武田逸輝(たけだいつき)さん(21)も、国民を置き去りに改憲への流れが加速することを懸念する。「与野党にはますます慎重で有意義な議論が求められる」と指摘。同時に、将来的に国民投票になる可能性も視野に入れ、「自分たちも関心を高める必要がある」と強調した。

© 株式会社下野新聞社