改めて知っておきたい「iDeCo」の節税効果、NISAよりiDeCoを選ぶべき人やふるさと納税との関係も

前回、「NISA」(ニーサ)について紹介しましたが、もう1つ資産形成において知っておきたい制度「iDeCo」(イデコ)があります。「聞いたことあるけど、調べる時間がもったいないし、NISAで十分」ですって? 節税できるかもしれないことに気づかず、もったいないのはどっちですか! なんて……嘆かわしい!

お得な税やお金の話を楽しく綴る、お笑い芸人で本物の税理士、税理士りーなです。

確かにNISAの節税効果は大きいので、「お得になったし、これで十分!」と、満足してしまう方もいると思います。でも、NISAよりもiDeCoの方がお得な場合や、併用でもっとお得になるケースもあるのです。

今回は、iDeCoについて、NISAとの違いも含めて解説します。


iDeCoとは「個人型確定拠出年金制度」

iDeCoの正式名称は「個人型確定拠出年金制度」で、

(1)確定:投資商品を選び金額を決める
(2)拠出:決めた掛け金を出す
(3)年金:その分を将来年金として受け取る

という制度です。年金というだけあり、60歳までお金を受け取れませんが、かわりに75歳まで非課税での運用を継続することができるのがNISAとの大きな違いです。

掛け金は会社員の方で企業で確定拠出年金(企業方DC)をしていない場合、月5,000円から23,000円となっていて、選べる商品は、債権という元本割れしないような手堅いモノから、「アクティブ」と呼ばれている、「もっと儲けたいから積極的にあれこれ売ったり買ったりして頑張ろう」とプロが考えて売買してくれるモノまでさまざまです。

「将来の年金なんて、自分でちゃんと貯金しているから大丈夫だよ」ですって!? なんて……嘆かわしい!

iDeCoは「投資する」という意味合い以上に、「節税して出ていくお金を減らすことで、手元に残る将来のお金を増やす」効果が絶大なんです。

控除によるiDeCoの節税効果

iDeCoで掛けた金額は、税金の計算をする時に「小規模企業共済等掛金控除」という長〜い名前の控除として引いてくれるのです。

収入のある方は「所得税」と「住民税」という2種類の税金を納めることになっていますが、この両方の税金の計算で「控除(引く項目)」として引いてくれるのです。掛け金をしているだけで、税金が安くなるということです。

この「小規模企業共済等掛金控除」は、iDeCoの掛け金がそのまま丸々引いてもらえるという、なんともゴージャスな控除で、大きな節税効果があります。住民税の税率は一律10%ですが、所得税の税率は収入が多い人ほど税率が高くなる仕組みで、たとえば給与の年収が450万円の方なら所得税率は10%です。

毎月20,000円ずつでも年間24万円の「控除」が受けられることになり、節税できる金額はこの場合、所得税と住民税を合わせると20%、つまり年間48,000円の税金が安くなるのです。毎年5万円近く安くなるって、大きいですよね。

iDeCoでは加入時・掛け金の拠出時・還付金受け取り時に手数料が取られるのですが、税金が安くなる効果を考えれば、少しの手数料を払ったとしても十分お得です。つまり、節税の効果が得られる会社員の皆さん(特に税率が高い高所得者)はかなりお得である、ということです。

逆に言うと、パートやアルバイトで年収が少なく、所得税や住民税をほとんど納めていないという人がiDeCoをすると、手数料が取られるのに減らせる税金が少ない、ということになります。このような方は、所得税・住民税の節税を考えるiDeCoよりも、純粋に投資の運用益に税金がかからないNISAをやる方がお得ということになります。

なお、所得税の計算や超過累進税率について詳しくは、以前の記事ご覧ください。

ふるさと納税とiDeCoの関係

iDeCoに掛け金をすることで税金が安くなると言うのはよくお判りいただけたのではないかと思いますが、ここで注意が必要なのは「ふるさと納税」です。

ふるさと納税は、自分の好きな地域や応援したい地域に寄附をして、その地域から「寄付ありがとうね〜!」という返礼品を受け取り、「寄付した分―2,000円」の住民税(本来自分が納めるべき自分が住んでいる地域の税)を安くする、という制度です。

ふるさと納税には、一定の計算式で計算された「寄附の上限金額」が設定されていて、それ以上寄附をしても、上限額を超えた部分は税金を安くしてもらえずお得感ナシでただ単に寄付しただけの「いい人」になってしまいます。

ここでおさえておきたいのが、ふるさと納税の注意点は、納める住民税額までしか税を引いてもらえない、という点です。iDeCoでお得に控除を受けることで、払うべき住民税がすでにかなり安くなっている場合、ふるさと納税で寄附をして節税しようと、あれやこれやら返礼品をカートに入れて、上限金額までガンガン購入していると、寄附をしまくったのにもともと税金が安くて引かれない、ただ寄附しただけのええ人になってしまいます。

ふるさと納税のサイトでは、自分の寄附できる限度額を試算してくれる「シミュレーション」のページがあります。今年からiDeCoを始るという方は、年収や控除など、前年と同じだと思うものはそのまま昨年分の源泉徴収票を見ながら金額を入れれば良いのですが、iDeCoによる控除額が掛け金をした分まるまる引かれますので、「所得控除」というところに年間のiDeCo掛け金額をプラスして上限額を試算しましょう。

企業型DCとの違いや兼ね合い

iDeCoは「個人型確定拠出年金」、つまり個人で勝手に掛け金ができる制度ですが、「企業型確定拠出年金」(企業型DC)はその名の通り、企業が取り次いで給与から天引き処理をして掛け金を代わりにしておいてくれる制度です。商品を選んで、投資商品に掛け金をして、受取金をもらい、月55,000円まで掛けられます。手続きを会社がしてくれるので手間は省けますが、商品ラインアップは会社が選んだモノのみになるので、限られています。

そして、注意しなければいけないのが、企業型DCの規約に「iDeCoとかけもちOK」と書いていなければ、併用できないということです。また併用可能な場合でも、掛け金限度額がかわり、会社によって異なりますが、およそ12,000円から23,000円程度で、企業方DCとiDeCoの両方を足して55,000円までとなるようになっています。

「それって併用する意味あるの? 会社が手続きしてくれる企業型DCだけで十分じゃん」と思ったあなた! ちゃんと併用する意味があるんです。企業型DCは、会社が用意した商品しか運用できないので、会社のラインアップに無い商品をiDeCoで補うことができるのです。なお、2022年4年10月からは規約の定めがなくても限度額未満であれば、iDeCoに加入(掛金は月額2万円以内)できるようになります。

また、もし転職した場合、大切に掛けてきた企業型DCの掛け金はどうなるか、ご存知でしょうか?

正解は新しい会社が企業型DCを用意していたら、そちらに受け継いでもらえます。もし新しい会社に同じ制度がなければ、個人型であるiDeCoに移管することになります。ただし、移管にも手数料が必要なので、要注意ですね。


iDeCoの制度について、お分かりいただけたでしょうか? NISAと同様に、運用して出た利益に税金はかからず、丸々自分のものになる上に、受け取り時もほとんど税金を納めることなく運用してきた金額を受け取ることができるのです。

こんなにお得なことだらけですが、60歳まで受け取ることができないので、20〜30代の方はまだ検討し難いかもしれませんね。でも40代後半ぐらいからは、お金の使い方の目処が立ってきて、積立に回せる金額が確保できると思うのでオススメです。

ちなみに、2022年5月現在でiDeCoの加入者数は全国で246万人。日本の50代の人口だけでも1,700万人(うち男性850万人)もいることを考えると、こんなお得な制度なのに、加入者数が少な過ぎると思いませんか? なんて……嘆かわしい!

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