“自民圧勝 野党惨敗・下” 野党、立て直し見通せず 参院選長崎

自民候補の当選確実を伝えるテレビを見詰める山田朋子立民県連代表(手前左)や髙藤氏(同2人目)、西岡氏(右手前)ら=長崎市恵美須町

 今年3月21日、JR長崎駅横のホテルニュー長崎。来崎した立憲民主の泉健太代表は県内最大の労働団体、連合長崎の幹部らと昼食を取りながら、3カ月後の参院選について意見を交わした。終了後、同団体の髙藤義弘会長は泉氏を部屋の隅に招き、長崎選挙区から立候補予定の同党県連副代表、白川鮎美氏(42)について、ある提案をした。
 「無所属で出馬できないか。勝つためにはそこまでしなければ」
 だが泉氏が首を縦に振ることはなかった。
 髙藤氏の狙いは白川氏の立民色を薄めることで、野党や労組の共闘態勢を強化することにあった。立民と国民民主両党は同じ旧民主の流れをくむが、原発政策などを巡り距離がある。連合長崎の加盟労組も大きく立民系と国民系に分かれ、白川氏を支える選挙協力の枠組み「7団体懇話会(7者懇)」でも、両党間にはすきま風が吹いていた。
 それでも自民の山本啓介氏(47)陣営は、大票田の長崎市を地盤とする国民の衆院議員、西岡秀子氏の動きを警戒。参院議長を務めた父武夫氏から受け継いだ支持基盤“西岡党”は、島原半島や諫早、西海両市などにも広がる。だが西岡氏は党公認候補の応援で県外の5選挙区を回り、県内での活動は限られた。
 当初は山本氏と共産候補との三つどもえが想定された選挙戦は6人が立候補、与党への批判票が分散した影響も大きかった。だがそれ以上に総合選対の中心となった立民県連の運営を疑問視する声が相次いだ。
 白川氏の出馬は3年前の参院選で敗れた直後に事実上決まっていたのに、総合選対の立ち上げは公示約1カ月前の5月15日。7者懇の関係者は「公示直前になって支援を要請する議員やOBを回るよう指示が出た。お粗末すぎる」とあきれた様子。総合選対が各地区選対の動きを把握していないこともあり、「機能していない。立民の議員に汗かき役がいない。本当に勝ちたいと思っているのか」との批判も聞かれた。
 惨敗から一夜明けた11日、立民県連の赤木幸仁幹事長は記者団に「もっと早い段階からしっかりとした態勢で取り組まないといけなかった。動き出しが遅かった」と責任を認めた。
 労組の組織率は年々低下し、以前ほどの集票力はない。事実、立民だけでなく国民も全国で議席を減らした。「昔のように組合員に投票するよう求めるだけでは入れてはくれない。今の股裂き状態では自民に太刀打ちできない。一つに固まれる政策や綱領が必要なのだが…」と連合長崎の髙藤氏。立て直しはまだ見通せない。


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