三年寝太郎

 むかしむかし、長門の国の厚狭(あさ)の里。庄屋さんの悩みの種は、ものぐさでごろごろ寝てばかりの一人息子。村人は「寝太郎」とあだ名を付けて笑っている。だが、三年三月の時を経て、彼はついに“覚醒”する▲山の上の巨石で川をせき止めて村を干ばつから救った、大量の草鞋(ぞうり)を佐渡に持ち込み、泥に交じった砂金を村に持ち帰った…その先の彼の業績には複数のバージョンがあるようだ。共通しているのは、寝ていたふうの民話の主人公が村の未来にあれこれ思案を巡らせていたこと▲一昨日も本欄で触れた岸田文雄政権の「黄金の3年間」。どうか無為に過ごしてくれるな-と重ねて願いながら書いている。とりわけ気になるのは参院選で惨敗した野党の側のこれから▲野党から見て4勝28敗。1人区での敗因は乱立と分散の末の共倒れだ。一方で、選挙結果を巡る世論調査では「もっと野党が議席を獲得した方がよかった」との回答が45%を超えた▲一定規模の批判勢力の存在や、与野党伯仲の緊張を国会に望む有権者心理は変わっていない。野党は態勢の立て直しを急がなければならない▲次の審判まで時間をもらったのはどの党も同じだ。準備不足だった、足並みがそろわない、時間切れだ…いつもの言い訳は通用しない。少しだって寝ている暇はない。(智)

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