誰もが挑戦できる社会を目指して学園全体でサポート 立命館大学が推進する社会起業家プログラム「RIMIX(リミックス)」

RIMIXとは、Ritsumeikan Impact-Makers Inter X(Cross) Platform の略称で、立命館大学、立命館アジア太平洋大学だけではなく、附属の小学校、中学校、高校まで、学校法人立命館の学園全体約5万人の児童、生徒、学生および卒業生を対象とした社会起業家育成プログラム。「Impact-Makers」は社会にインパクトを与える人、「Inter X(Cross)」は立命館内外の異種交流を意味する。

挑戦をもっと自由に

新しい価値を創造し社会に貢献する企業を大学から

学校法人立命館は、2019年に社会起業家育成プログラムRIMIXを立ち上げ、2020年「挑戦をもっと自由に」をビジョンとした中期経営計画「学園ビジョンR2030」を策定、2021年6月には、起業・事業化推進室を設置した。

「少子高齢化の日本において、社会情勢的に新しい産業、富、価値を生み出していく使命が大学にもあるのではないでしょうか。ただ起業の数を増やすということではなく、新しい価値を創造し、社会に届ける、そして持続可能な企業を大学からも生み出していきたい」と、立命館大学の徳田昭雄副学長は話す。

立命館大学が、企業や京都商工会議所などの協力を得て、起業家の育成プログラムを実施するようになっておよそ20年。以来、大学の起業家支援の先駆者的役割を果たしてきた。

2004年には、大学発ベンチャーの創出と起業家精神の育成を目的とした「立命館大学学生ベンチャーコンテスト」を、全国の学生に向けてスタートさせた。

技術やテクノロジーオリエンテッドのプランが多かった開始当初に比べ、最近では、社会的課題を解決するためのビジネスプランが入選するようになった。徳田副学長は「おそらく、小学校から大学まで、課題解決型の授業が取り入れられるようになって、社会課題に興味をもつ学生が増えてきたのではないか」と分析する。

社会課題を解決するためのマインドやアイデアを醸成し

一人ひとりの社会課題解決の取り組みを起業までサポート

RIMIXの各プログラムは、自分にとっての社会意識を発掘し、問題意識を高める「Chance」、一人ひとりの社会課題解決アイデアを形づくり、ビジネスマインドを育成する「Challenger-ship」、アイデアをプロジェクトとしてブラッシュアップし、発信し、評価を得る「Entrepreneur-ship」、本気で起業をめざす層への支援を行い、社会的インパクトを生み出す「Entrepreneur」の大きく4段階に分類でき、自分やりたいことや状況に合わせた組み合わせが可能だ。

さらに、起業の基本とも言える事業計画書の書き方をはじめ、人、モノ、お金の集め方などのノウハウを、ジャフコ、ソニー、コモンズ投信といった協賛企業から学ぶことができ、新たに設立された「立命館ソーシャルインパクトファンド」が資金面でのサポートを行う。

原資は学園の資産運用益の一部から10億円を設定、ただし、経済的リターンとソーシャルインパクトを重視の上、投資先として選定が行われる。

このように、学園全体で起業化までの支援を幅広く行う仕組みを整え、社会課題を解決したいというマインドやアイデアを醸成する。

→失敗を恐れず、経験に変える 誰もが挑戦できる、そして成長する社会を

失敗を恐れず、経験に変える

誰もが挑戦できる、そして成長する社会を

起業・事業化推進室では、専任スタッフ3名、兼務3名の計6名が、橋渡し役となって、学生、社会、企業、教員をつないでいる。2022年度からは、学生たちと一緒に伴走するようなハンズオン支援や交流を目的とした「立命館ソーシャルインパクトデイ(仮称)」なども開催予定だ。

そして、これらの取り組みを通して、すでに起業した学生もいる。

2021年度「総長PITCH CHALLENGE」のファイナリスト、「立命館大学学生ベンチャーコンテスト2021」で最優秀賞・ASTER賞を受賞した食マネジメント学部2回生(当時)の柳陽菜さん。

離乳食に悩む子育て世代と専門家をつなぐ「ママとパパのための離乳食・子育てサポートサービス:FoodFul」のビジネスプランで起業チャンスをつかんだ 。現在は「株式会社FoodFull」の代表取締役となり、オンライン離乳食サポートサービスアプリ「childish(チルディッシュ)」を配信、子育て世代の「食」の悩みに寄り添い、今後は、離乳食の商品開発などにも取り組む予定だ。

徳田副学長は、「起業するなら立命館」というモットーを掲げる一方で「失敗するなら立命館」でもありたいと話す。

「今の日本では、失敗が許されない風潮を感じます。しかし、失敗も貴重な経験です。ですから、本学が失敗してもよい場を提供します。イノベーションを理念とする大学として、新しい価値創出を担う人材をさまざまな形でサポートし、もっともっとみなさんが未来志向で挑戦できる環境を整えたいと思っています」

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