“孤立せず相談を” ニセ電話詐欺 長崎県内の留学生も標的に 今年、既に被害2件

唐さんのスマホにはたくさんの非通知の着信が残る=長崎市内

 ニセ電話詐欺の被害に遭うのは日本人ばかりではない。今年3月、長崎市内の中国人留学生(20代)が現金計約380万円をだまし取られる事件が発生。異国の地で暮らす外国人たちもまた狙われている。
 長崎市の大学職員、唐雅雯さん(30)はこの1年、「ニセ電話」に悩ませられ続けてきた。
 昨年夏、スマートフォンに突然かかってきた1本の電話。知らない男が中国語で言った。「あなたの郵便物が広州(中国)でストップされている。あなたの友人の○○さんが帰国する時に危険物を持ち込んだが、それがあなたの荷物だということになっている」
 なぜ自分の名前を知っているのか。唐さんは一瞬ひるんだが、友人の名前に心当たりがない。「詐欺だ」と思い電話を切った。電話はその後も執拗(しつよう)に続く。上海、北京、アメリカ-と発信地もバラバラだった。
 警戒していた唐さんだったが、一度だけ「罠(わな)」にはまってしまった。「あなたの荷物が搬送できない。9番を押してください」。実在の物流会社を名乗る音声電話があり、唐さんは折り返し連絡をした。
 「唐さんは東京から荷物を送りましたか?」。電話口で知らない女が尋ねてくる。唐さんが「送っていない」と答えると、女は「荷物にあなたの名前が書いている。コロナの治療薬が入っていて、それは個人的に中国に送ることができない」と早口で言った。
 「身分証明書を落としたり個人情報を他の人に教えてないか?」。畳みかけてくる女に唐さんが尋ねた。「落としていない。私は何をすればいいの?」。女は「お金を払わないと捕まる」と脅迫。唐さんは「あなたたちは詐欺グループだ。通報する」と言って通話終了ボタンを押した。
 ニセ電話の回数は次第に減ってきた。唐さんは「無視するしかない。すぐに友人に話すことが大事」「在日外国人の間で、ニセ電話の情報を共有し、注意喚起する仕組みがあればいいのに」と話す。

ニセ電話詐欺の県内被害状況


 県警によると、県内で在日外国人を狙ったニセ電話詐欺被害は2020年が1件、21年2件、22年も6月末時点で2件起きている。被害者は全員中国人。関係者によると、日本に留学する中国人は富裕層が多く「春節(旧正月)の際、実家から多額の仕送りをもらう留学生もいる。その時期が狙われたのではないか」。
 留学生481人が在籍する長崎大では5月、中国人女子留学生が電子マネー3万円分をだまし取られた。同大留学支援課は「1人で悩まないようにメールで呼びかけている」。98人の留学生を抱える長崎外国語大は、来日したばかりの学生向けのオリエンテーションや学内掲示板で注意喚起。国際交流センターで相談を受け付けている。
 外国人は詐欺被害に遭っても相談する相手がおらず、1人で悩むケースも少なくない。県警などは「孤立せず、相談してほしい」と呼びかけている。


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